ほらね 僕らは僕らのルーツを知らないでいるから
009 パーソナルワールド
静かに玄の話を聞いていた山本元柳斎重護廷十三隊総隊長は、うむ、と頷いた。 「確かに、儂の若い頃に一度そういう話はあった。 が、お主が彼と同じ存在であるということを証明する術でもあるのか」 「ええー…証明と言ってもなぁ、 データは勿論全部頭に入ってるけど…それだと調べれば分かることだろって言われそうだし〜。 仕事中は死なない、ってのも回復には時間掛かるし、 そもそも血と涙と汗が大量に掛かるから嫌だし…うーん…どうしたものかな」 うんうんと唸る玄の裾をカナタはちょい、と引っ張った。 「何、カナタ」 「日番谷隊長がその身を保証してる、ってのじゃ駄目なの?」 「駄目だよ〜。 だって冬獅郎が嘘を吐いていない、もしくは僕に操られていない確証なんか山爺にはないもの」 そういう可能性も、あるのか。 にべもなく一刀両断されたカナタは、やや呆然とそんなことを思っていた。 今までいた世界は、平和の方だったのだ、と。 そんな当たり前のことを突き付けられて、こんなにショックを受けるなんて。 「信用に足らないことは、勿論良く分かってる。 正直怪しくてたまらないってこともね。でも、こっちだって仕事なんだ。 それも、世界を掛けた。こんな大それた狂言を企てる者がいるかな」 へらり、と玄は話を続けていく。 「それに、一応局の存在は機密事項だろう?  そうだな、この世界では―――霊王、と言ったっけ? 彼らと同等程度の」 それを、山本はじっと見つめている。 疑っているという顔を隠さないのは、それだけ自分の力に自信があるからだろうか。 与えられた知識のおかげで彼がいるその地位が、 どれほどすごいものなのか、理解はしているはずだった。 けれども、実感というものはそう簡単に追いつかない。 「最悪ほら、たたっ斬ってくれても良いから。 その場合僕の書類が増えるから、正直勘弁して欲しいんだけど」 ね? とダメ押しのように首を傾げた玄に、はぁ、と溜息が吐かれる。 「…あい分かった」 「よかったー! これで比較的楽に仕事が出来る!」 わーいやったーと跳ねて回る玄を見て、山本がまたため息を吐いたことは見なかったこととする。 こんな奴が本当に、と思っているのが手に取るように分かる。分からせているのかもしれなかった。 「今から緊急隊首会を招集してお主を紹介するが…そこの小娘も一緒の方が良いかの?」 小娘、と指されたのは言うまでもなくカナタだった。 「わ、私ですか…?」 どうするんだろう、と玄を窺う。 連れて来られたには来られたし、 能力や知識も貰ったので恐らくは同じように死神にならせる予定だったのだろうけれど。 玄と違ってカナタには仕事がない。 「ん〜仕事で来てるのは僕だけなんで、紹介は僕だけにしてもらえませんかね。 この子は何処へ配属するなり何なり。 まぁ僕らのことを危険分子かもしれないって監視するなら、一緒くたにしといた方が良いですか?」 同じことを考えていたらしい。 「…そう、じゃな、お主らの配属先は後々決めるとして、 一緒においておいた方が処分する時も楽じゃろう」 「わぁ。処分する前提で話されてる〜悲しい!」 動き出した山本の後ろを玄がきゃっきゃとついていく。 その後ろを、 日番谷がため息を吐きたそうな顔で(でも上司の前だから吐かないでいるような顔で)、 ついていく。 一度だけ玄が振り返って手を振った。 「じゃ、ちょっと行ってくるね。カナタは乱ちゃんと一緒に待っててね〜」 そうして、扉は閉ざされた。   
20150124