ハロー ハロー 僕らはこうやって手の内を明かして 互いを知ったふり 知られたふり
008 自己紹介
少年が何処かへ連絡を入れて、そうしてやっと辺りに響いていた警鐘は鳴り止んだ。 「じゃ、一番隊舎まで行こっか!」 「行こっか、じゃ、ねぇ!!」 べしこーん。 本日二度目の良い音が響く。 「いったぁ…だってぇ、冬獅郎がいないと僕らまた追い掛けられたりしちゃうよ。 それだと二度手間だし〜。ほら、護送だと思って!」 楽しそうな玄に、少年は諦めたようにため息を吐いた。 眉間の皺が更に深まって、自分もその一端ながら、大丈夫かな、なんて他人事のように思った。 取れなくなりそうだ。 ぺたりぺたりと一番隊舎までの道のりを歩いていく。 先ほどまで警鐘が鳴っていたはずなのに、周りには人影はない。 もしかしたらそういう道を選んでくれているのかもしれなかった。 「そういえばその服はどうしたんだよ、何処の隊員から剥ぎ取った」 「剥ぎとったなんて人聞きの悪いー! ちゃんと自前だよ、ほら、隊章のとこも管理局のマークだし」 めろ、と玄が襟を捲ってみせる。 そこには勾玉のようなマークがあった。 カナタも同じように自分のものを見てみる。 黒一色で塗り潰された、円から尻尾の生えたようなマーク。 これが、彼らの属する組織のマークなのか。 思い出されるのは白い部屋にいた人々。 どんな、組織なのだろう。 世界のバランスをとる、だなんて、冷静に考えれば壮大すぎて何がなんだか分からない。 「…あのォ、」 漸く、と言ったように後ろから付いてきていた金髪美人のお姉さんが声を上げた。 「そちらの方たちは結局一体どちら様なんです?」 そういえば、とそう言われて初めて、玄と隊長らしい少年が喋っていただけであり、 何も自己紹介らしいことをしていなかったと気付く。 少年が目線で促すと、玄がぺこりと頭を下げる。 「僕は虚口玄です。仕事は世界のバランスを保つこと! こっちはさっきも言ったけど束左カナタ。同僚じゃないけど同僚みたいなもの」 「束左カナタです」 「はぁ…松本乱菊です。十番隊副隊長」 松本もどうやら玄の厨二説明にはついていけなかったらしい。 とりあえず、と言ったように差し出された手を玄がとって、ぶんぶんと振る。 楽しそうで何よりだ。 そんな玄を横目に、カナタは少年の方を見やる。 玄のおかげで彼が冬獅郎という名らしいことは分かったが、 あとは隊長であること以外あまり分かっていない。 カナタの目線に気付いたのか、少年がああ、と息を吐く。 「日番谷冬獅郎、十番隊隊長だ」 増えた情報は苗字だけだったが、 こうして名を交わすことは、どうしてこんなにも安心するのだろう。 それが嘘でないとも、限らないのに。   
20140630