会いに来たと君は嘘を吐く
僕は直ぐに嘘だと気付く
けれども嘘ごと愛してしまえる自身に
嗚呼 吐き気さえ覚えるな
007 突撃
「久しぶり!冬獅郎!!」
豪快に蹴り開けられたその扉の向こうにいたのは、
銀色の小さな少年と、ナイスバディの金髪美人だった。
「玄!?」
少年が目を見開く。
「お前、何で此処に!?」
「会いに来たよ!…って言いたいところだけど残念ながらウッソー。仕事」
親しげな様子に知り合いなのか、と二人を見比べた。
並ぶと色彩が薄い、なんて場違いなことを思う。
「た、隊長…お知り合い、ですか?」
カナタの疑問は金髪美人が代弁してくれた。
「ああ、知り合いっていうか―――」
少年の言葉を遮るように、鳴り響いたのは警鐘。
『緊急警報!瀞霊廷内に侵入者あり!
侵入者は十番隊隊舎へと逃げ込んだ模様!繰り返す―――』
少年がぎろり、と玄を睨む。
ついでにカナタのことも睨む。
玄は変わらずににやにやしているだけだ。
『追加情報!侵入者は二名、銀髪と黒髪の子供!
銀髪の方は斬魄刀と思われる武器を所持―――』
少年が玄の頭を叩く。
べちこん、と良い音がした。
「いッ………っー…」
悲鳴を上げた玄の目にはうっすらと涙が滲んでいる。
そんなに痛かったのか。
「な、何も殴ることないじゃん…」
「うるせぇ。どいつもこいつも俺の仕事増やしやがって…」
どいつもこいつも、の時にちらりと少年の視線がお姉さんに向いたのは気のせいではないだろう。
彼女も何か、仕事を増やしたのか。
「…何で外から来たんだ」
「空間軸が不規則に動いたから。要するに失敗した」
少年の静かな問いに玄が答える。
尋問のようだ。
「人がいる時に来たのは?」
「ちょっとこれから暫くこっちで仕事だから」
「後ろにいるのは」
「束左カナタ。事情があってこっちに連れてきた。
僕の同僚みたいなものだと思ってくれれば良いよ」
ため息。
「…これから、どうすんだよ」
それはカナタも聞きたかった。
本意ではないとしても、こうして現に失敗してしまって大騒ぎになっている訳だし、
仕事があると言うのなら尚更、どうにかしなければならないだろう。
「ん、とりあえず山爺に会いに行こうと思ってる。
あの人が若い時調整入ってるはずだし、話分かってくれると思う」
「そうか」
ええ、とカナタの後ろでお姉さんが声を上げた。
「総隊長を山爺呼びって…あの子何者なのよ…」
その言葉にええ、となったのはカナタだった。
総隊長、つまり、十三隊で一番に偉い人。
そういえば衝撃で見落としていたけれども少年が着ているのは隊長羽織だし、
一緒に執務室にいるということはこのお姉さんも副隊長とかそういうのなのだろう。
そう思うと、ため息を吐きたくなった。
ジャブがきつい。
ああでも、と思う。
玄といる限り、平凡には生きられそうにない、なんて、そんな諦めに似たことも思うのだ。
← □ →
20140630