愛とか 恋とか
名前を付けるだけ無駄でしょう


013 関係 

 「と、言う訳で! 僕とカナタは晴れて十番隊所属となりましたーぱちぱちぱち」
手を叩く変わりに口で言うのはどうなのかと思う。手を動かすのも面倒なのか、玄は執務室のソファに寝っ転がったまま、起きる気配すら見せない。
 いろいろ暴れ回ったのだし、その反動かな、なんて思ってしまうのはカナタも玄の厨二設定に飲まれ始めているからだろうか。いやここまで来てもまだ厨二設定扱いするのもどうかと思うがしかし、あまりに厨二なため、カナタにはそれ以上の感想が抱けない。カナタ自身その厨二設定の渦中にいるはずなのだが―――自分のことは棚上げ、というやつである。
「まぁ今後のことは冬獅郎に任せるとしてー。僕の仕事まではまだ時間あるし、それなりにこの世界に適応していく猶予期間として使うつもりだよ。カナタは別に仕事ある訳じゃないけど、一応この世界で生きてく話になってるからさ、慣れる努力でもしたら良いと思うよ」
丸投げ。
「え、その、」
「流石に何も起こってないのに僕の一存でカナタの割り振りとかー決めらんないし、ぶっちゃけメンドくさいし〜」
後半が本音じゃないのだろうか。
 これ以上言っても無駄だ。この短期間でカナタは引き際を覚えた。玄に関して何を知っているとも言えない状態だけれどもこれだけ振り回されれば分かる。まあ玄曰く、その振り回した原因≠ヘカナタ自身にあるらしいのだけれど、もうその辺は本当に厨二設定すぎてついていけないので解釈や理解を放り投げた。自分のことだがカナタはそういう未来よりも、今キャパシティオーバーを起こさない方を選びたかった。
 はあ、とため息を吐いてから日番谷に私はどうしたら良いですか―――と聞くべく顔を上げて。
「あ、そういえば」
まだ聞いていなかったことを思い出した。
「日番谷隊長と玄って、結局どういう関係なんですか?」
昔ながらの友人、だろうか。二人は顔見知りだったようだし。けれども厨二設定を抱える玄と、多分この世界の純粋な住人であろう日番谷が何処で知り合ったのだろう。
「…なんだ、言ってなかったのか」
「あー言ってなかったねえ」
「たいちょー、アタシからも聞いていいですかー」
「…玄」
「別に良いよ? 言う暇っていうかタイミング? なかっただけで隠しておくつもりもなかったし、こんな好機逃せないしさー」
何の話だろう。
 こほん、と日番谷が咳払いをする。
「あー俺と玄は、」
そんな溜めるような関係なのか。
「恋人だ」
 え、と。思いもよらなかったその答えに、口が開いたままになった。
 恋人。こいびと。こ、い、び、と。それはつまり恋愛関係にあるということで、多分この場合はちゃんと相互に気持ちが通じ合っているということで、それは、つまり。しばらく経ってやっと声を上げたのは松本だった。
「えっ隊長そういう趣味が!?」
そういう、趣味。日番谷は男、玄も男、つまり、つまり? そういうこと、なのだろうか。
「何言ってんだよ」
何色とも言えない声を上げた松本と、その隣でかちんこちんに固まってしまったカナタが、何を考えているのか悟ったのか、日番谷は腕組みをしたままため息を吐く。
「こいつは女だろーが」
 いち、に、さん。
「へっ?」
カナタと松本の声が、綺麗に揃った。ハーモニーだ。二重奏と書いてハーモニーと読んでも差し支えないレベルのハモり具合だった。
「あはは、勘違いしてたんだ二人とも!?」
当の本人は大爆笑である。
「改めて自己紹介! 虚口玄、正真正銘の女の子でっす!」
星でも舞ってそうなきゃぴきゃぴした言葉に、カナタと松本はこれまた綺麗に揃ってええっ!? と声を上げたのだった。

  

20160923