そんな陳腐な言葉が市民権を得る
こんな世界が羨ましい


011 ことば 

 そんなふうにして玄とカナタの所属先が決まっていた頃、一番隊舎の外でカナタと松本は立って玄と日番谷を待っていた。
「…信じられない、ですよね」
黙ったままいるのも何だと思い、思い切って話し掛けてみる。
「こんな話…世界をどうこうなんて、突然言われても」
信じられないのはカナタも同じだ。こうして、世界を移動して来た今でも、信じきれていないのが実情である。身をもって体験したはずのカナタでさえそうなのだ、ただ目の前に変人が降り立ってぺらぺら意味不明なことを喋られただけの松本は、余計に信じられないだろう。
 ちらり、とこちらを見た松本は息を吐いて、そうね、と言った。
「まぁ、正直突拍子もない話だし、正直今からでもふざけてたって言って欲しいくらいだわ」
髪を掻き上げるのも美人がやると様になるのだなあ、そう思って眺める。
「でもね、信頼する隊長が信じてる話なんだから、副隊長のアタシは疑いを捨てなくとも、とりあえずは受け入れてみたって良いんじゃないかしら…なーんて思うのよね。ま、ぶっちゃけた話、考えるのが面倒になったのよ」
 どきりと、胸が鳴った。
「…真っ直ぐ、信頼って言えるの、羨ましいです」
「アンタはあの玄って子を信頼してないの?」
「信頼も何も、今日会ったのが初めてで…」
「はぁ!?」
この話は何処までして良いものだろうか。
 正直、カナタだって玄の言ったすべてを信じている訳ではないし(だって信じるにはあまりにも設定が厨二すぎる)(玄に言ったら言ったで厨二言うなと怒られそうではあるが)、その世界だとか転生だとかその他諸々、ぺらぺら話して良いことでもない気がする。
「ちょっとなんか、のっぴきならない事情がありまして、連れて来られたというか攫われて来たというか、いや一応同意はしてるんですけど、その…まだちょっと、こう、いろいろ…」
もごもご、と後半が言葉にならない。カナタだってまだまったく整理がついていないのだ。
 その辺を松本は一応自分なりに咀嚼して飲み込んだらしい。ふうん、とその唇が引き結ばれる。
「アンタも大変ね」
その言葉にはたはは、と笑うしか、なかった。

  

20160923