世界に色をつけるなら白黒だけで構わない 世界に花を添えるなら枯れたもので充分だ つまらない世界に 奇麗なものは 何一つ 要らない
001 誘い
何が起こっているのでしょうか、カナタは心の中で自問自答した。 何故私は侵入者と話をしている? 「とりあえず自己紹介するね。僕は虚口玄!よろしく!」 よろしくって言われても、とカナタは呆れの混じった表情で玄を見遣る。 この侵入者は男なのだろうか、と先ほど聞いた一人称を元に考える。 如何せん顔立ちが中性的すぎて些か性別の判断には決定打がないように思えた。 悶々と考えるカナタをよそに、彼(にしておく)は上機嫌で続ける。 「世界のバランスをとるお仕事をしています!」 世界のバランスとは大きくでたな、と再度呆れる。 まるで厨二だ、いや今どきの厨二でもきっともっとちゃんとしたことを言うに違いない。 「単刀直入に言うと、」 彼はにっこり笑った。先ほどよりも更に楽しそうな笑み。 「束左カナタさん!君はこの世界の人間じゃない!」 たっぷり十五秒。 「は?」 間を開けたことなどなかったように、カナタは低く吐き出した。 どうやら厨二設定に巻き込まれるらしい。 「ちなみに君は種族名で言うと死神ね」 「死神?」 「骸骨が鎌振り回してるのとは違うからね?」 何を言うより先に否定された、 「これは総じてそうだと思うんだけど、 死神ってのは生命を奪うんじゃなくて魂を導いてくれる存在なんだよ。 勘違いしてる人、多いけど」 どうやらこだわりがあるらしい。 「…そう、なんですか」 「で、話を進めるとね」 そしてまだ続くらしい。 「君が此処にいると、世界のバランスが崩れちゃうんだよね」 たっぷり今度は三十秒。 「は?」 本日三度目の反応である。 しかし、これ以外に出来る反応があるかと言うと、ないのだ。 残念ながらカナタには突然振られた厨二設定にアドリブで対応出来るほどの柔軟性はない。 「今まで管理委員会は君を観察対象としてたんだけど、 これ以上のズレは看過できないって話になってね。 崩れた世界の修復もしなくちゃいけないし。 だから手っ取り早く、君を元の世界に戻そうってことになって、 その案内人として僕が派遣されたって訳」 真っ直ぐに、見つめられる。 真っ直ぐすぎて、息が出来ないような気さえした。 まるで、吸い込まれそうな。 此処までカナタは玄の語る内容が嘘だと思っていた訳だが、 嘘を吐いている人間がこんな目をするものだろうか。 いや、もしかしたら玄の中では真実なのかもしれない、強い幻は現実になるというから。 「…元の、世界、に」 そう思っていたのに、カナタは繰り返していた。 何処か心の奥で、殺される訳ではないのかと安堵する。 つまるところ、カナタは異端なのだと言われたのだ。 その次にだから殺すと言われても何ら可笑しいことではない、単位が世界なら尚更だ。 異端は排除する、それが通常の思考。 「向こうの世界の調整もあるし、僕もついていくよ」 そう言いながら玄は一冊の本を取り出す。 「見たことくらい、あるでしょ?」 BLEACHと書かれた表紙の文字が、やたらと目についた。   
20130326