第四話 馬鹿にされても耐えましょう



ふひ、と嫌な笑い声が―――いや心の中でまで取り繕っても仕方がない。
気持ちの悪い声が、
花宮の耳に届いた。それが今目の前にいる探偵の口から発せられたとは正直考えたくない。
どうしても、だ。
共に行動する花宮の品位に関わる。
「花宮はアレ、なんやと思た?」
「アレって何ですかアレって」
「藤棚」
「藤棚は藤棚でしょう」
流石に此処まで言われればあれが藤棚ではなかったのだろうと予想はつくが、
この探偵の思う通りに助手役を演じてやるのも疲れる。
勝手に一人で推理を進めてさっさと帰る準備をさせて欲しい。
此処まで来るのだってそうそう楽ではないのだ。
一切運転しない癖をして、本当、自分の都合で人を振り回さないで欲しいと思う。

ふひ、とまた気持ちの悪い声が聞こえた。
聞こえないふりで善知鳥の様子を窺う。
どうやら血管の破裂は避けられたらしい。
花宮と同じように、気色の悪い笑い声に鳥肌を立てているらしかった。
「やっぱ、あれ、花宮藤棚やて思ってたんやな」
小学校とかで見たことないんか?と問われる。
そんな昔の記憶は殆ど残っていないので答えない。
「屋敷の方は知っとりますよね?あれが、何なのか」
ハイ、剣路さん、と指されたのは善知鳥の秘書である男だった。
「え、あ、私、ですか…?」
「ハイ、貴方です。
この出来の悪い助手にアレが何なんか、教えてやってもらえませんかァ?」

助手になった覚えはない、と怒鳴り散らしてやりたい気分ではあったが、もう今更だ。
何を言うこともしない。
この場では花宮だけが常識人なのだ。
最低でも善知鳥より先に血管をはちきれさせてたまるか。
「キウイ、ですね」
「キウイ?」
思わず、問い返した。
「キウイ。花宮、知らんの?」
「いや知ってますけど。あの藤棚キウイだったんですか?」
「そうやで。見れば分かるやん」
誰も彼もお前と同じような頭してると思うなよ―――という台詞は
花宮のそれなりに高いプライドがなんとか阻止して、外に出ることはしなかった。

けれども。
「ワシとおんなじような頭しとらん花宮には分からんかったやろうけどな〜」
性悪サトリ野郎にはお見通しだったらしい。
「…ま、これで花宮にも猫団子の理由分かったやろ?」
「は?何でキウイで猫…?」
「は〜あ、そんなことも知らんの」
盛大なため息がまたわざとらしい。
「キウイはマタタビ科やで」



  





20141113