本当に、これで良かったのだろうか。
自問自答することがないと言ったら嘘になる。
ちくりちくりと胸を刺す罪悪感に蓋をして、突き進む以外に道はない。
蓋をし続ければ、それを無視することにも慣れていき、
先輩たちの夏が終わって自分たちの時代が来た時にはもう、感じなくなっていた。
「花宮」
眼鏡の奥の瞳の色は読めない。
「お疲れ様でした、今吉先輩」
悟られないように笑って返す。
無理だろうが。
「…あんま、無理するんやないぞ」
ぽん、と最後に撫ぜた手のことは理解出来なかったが、直ぐに記憶から消えていった。
試合が終わって、コートの中で敗けたことに涙を流す姿も、
もう出れなくなってベンチで涙を流す姿も、更には自分たちに憤る姿でさえ。
すべてが歓喜に変わったのだから、もう迷いは消えたと言っても過言ではない。
天才だろうと何だろうと、壊れてしまえば同じこと。
大抵の奴が心を折られて、身体を壊されてバスケから離れていった。
無様に泣き崩れる姿に、何処か満たされる気がしていた。
一年はあっという間だ。
またあの絶望が前に立ちはだかる。
この一年必死に作り上げたはずの刃は誰にも届かずに終わった。
絶望たちの冷たい目だけが、こちらを見ていた。
絶望は絶望のままで、どうして狂ってしまえないのか、不思議だった。
そうして、中学三年の夏は終わる。
絶望に打ちのめされたまま、待っていたのは受験だけだった。
「花宮どこ受けんの?やっぱ開○とか?」
「何でだよ、普通に霧崎行く」
「ありゃ、意外と近場…」
膨らんだガムフーセンがぱん、と弾けた。
「霧崎くらいならオレでも頑張ればいけるかな〜」
「…まぁ、大丈夫だろ」
勉強して、合間に身体を動かして。
秋も冬も何も楽しくないうちに春が巡ってきて、無事に桜は咲いた。
第一志望に受かって考えたのは部活についてだった。
「やっぱりバスケやる?」
放課後、原が問う。
「…迷ってる」
正直に言った。
「ふぅん」
自分から聞いたというのに興味なさそうに返して、原は笑う。
「オレはバスケやるよ。
どんなバスケでも、好きだから」
それが、原がバスケを好きだと言った、最後だった。
「山崎弘です。ポジションは何処でも」
「古橋康次郎です、バスケは未経験です」
「瀬戸健太郎です。
ポジションはセンターしかやったことはありません」
「原一哉でっす。
ポジションはどっこでもー」
「花宮真です。ポジションはポイントガードです」
冷たい予感はなかった。
どれだけ歪んだとしても、それが正しいのだと思うことにした。
三ヶ月もあれば、部を掌握するのは簡単だった。
「来年からはオレたちのバスケ部にする」
今の二年には早めの引退と、使えない監督には引導を。
「覚悟のある奴だけついて来い」
どれだけ穢すことになろうとも、これを手放すことは出来なかった。
可笑しくなる程、 なんて、誰も口には出さなかった。
誰もが心の奥に押し込めて、その思いを殺した。
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20121106