私は残酷な人間だった。

春が来るまでの期間限定 宗さに

 私の余命、というものが告げられたのは皮肉かな、この戦争が終わろうとしていて審神者は一振りの刀剣男士を護衛に―――これは帯刀と呼ばれる行為らしいが私には無関係になってしまったのでもうどうでも良いのだった―――選ぶようにと通達が来た頃のことだった。本丸は解体、ということにはならず、戦力として保管するため、審神者自身を鍵として開く空間で他の刀剣男士は眠りに就くらしい。私はそういうことについて専門外なので、上の人の話をのらりくらりと聞いているだけだった。
 この本丸で、仮にも戦争中に何を、と言われるだろうが。私は私の刀剣男士、宗三左文字と所謂ところの恋仲にあった。それは本丸中に知られていることで、だからこそ護衛など満場一致で宗三左文字にされたというのに。
 悪いことをしてしまったな、と思う。
「…宗三」
「なんですか、そんな頼りない声を出して」
「死ぬのって怖いんだね」
「本丸に攻め込まれた時ですら臆さなかった貴方もそんなことを言うのですか」
「余裕があるからかも」
「余裕。確かに、そうですね」
 私の余命によって、この本丸は解体が決まってしまった。私の刀剣男士たちは、他の誰かに引き継がれることをよしとはせず、一足先に封印に入っていった。其処は本来であれば私の生命が途切れたら開く場所であるのだが、少しいじってもらって私の生命が途切れたらそのまま消滅するようにしてもらった。それを選んだ私の刀剣男士たちは、私に似てしまったのだと思う。
「ねえ、宗三」
「何ですか」
「結婚しよっか」
「僕たちに戸籍はないのですが」
「だから、ごっこで良いよ。指輪とか、式とか。そういうもの」
「…そうですね」
 宗三左文字は、封印の中に入らなかった。そして、私の生命が途切れても彼に何が起こる訳でもない。まあ、賢い彼のことだから政府にでも出向いて刀解を申し出るか、それとも―――。
「貴方の我儘ですからね」
私の遺していく、最大限の呪いを受け取って生き続けるのか。
 私には見届けられないことだけがさみしかった。



あの人がもうすぐ死ぬの厳冬に終わりを競う恋と昭和と/純血/月にいる人 / 松野志保



20191221