![]() 夢見る道具 自分の手を見やる。それは何処までも人間のような手だった。だからこそ自分自身を握り、振るうことが出来るのだが、それはそれでおかしな気分だ。いや、いつもいつも違和感が纏わりついている訳ではない。だが、ふとした拍子にこれはとてつもなく不思議な現象に巻き込まれているのだなあ、と思う。 鶴丸国永は刀剣男士で、他の刀剣男士と一緒で本霊というものがいる。鶴丸国永はその本霊とやらに会ったことはなかったが、一体どうして人間に力を貸そうと決めたのか。人間というものが愛おしい、人間というものが憎らしい、それはおそらく鶴丸国永だけでなく刀剣男士、もっと言えば人の手で使われてきた道具を核にしているもので、こころが芽生えているのであれば備わっている感情だろう。 手を伸ばす。この動作にも慣れてしまった。最初は少しばかり迷惑そうにしていた主もこれと言った反応を見せなくなったし、止めるべきか迷っていた蜻蛉切は完全にタイミングを失ったようだった。主には術が掛けられている故に心配する理由はないと思っていたが、もしかしたら蜻蛉切が言いたいのは違うことなのかもしれない。 「無花果」 その名が本物でないことを知っているが、今はそれもどうでも良い。 彼女を呼ぶための名前がある、それだけで。 「俺たちがもしも愛なんてものを間に挟みたいなら、どうやら最低一回は生まれ変わらないといけないらしいな」 「一回で神が人間になれる可能性はあるのか?」 「そんなもの、やってみないと分からないだろう」 「そもそも神に生まれ変わりなんてあるのか」 「どうだろうな。俺たちは完全なる神じゃない。仮にも、神だ。いっとき神社にいたから似たような力を持っている、それだけの存在だよ。君も分かっているだろう?」 「全員が全員、そういう訳ではないだろう」 「今日は頑なだな」 「私が頑ななんじゃなくて、君は今日はやけに粘るだけさ」 そうかもしれない、と思う。 「ああ、でも、どちらでも良い。神にも生まれ変わりはある、一回で人間になれる、生まれ変わったら俺はすぐに君を見つける。それは、夢だ」 「ああ、夢だな」 「だから、なあ、俺の代わりに夢を見てくれ」 狡いな、と思いながらも続ける。 「それは人間の得意分野だろう」 20170416 |