![]() ふと気になった、という訳でもない。だって、その答えを最初から鶴丸国永は知っていたはずだから。 貴方の手をいつまでも握っていたい 「君はこの戦争が終わったらどうなるんだ?」 そんな質問をしたのは彼女が日次報告を書いている時だった。振り返った彼女は少し驚いたように目を見開いてみせて、それからええと、と言葉を探す。 「鶴丸国永、君は自分のことは聞かないんだな」 「俺のことより君のことが気になるんだ」 自分のこと―――自分だけではなく、刀剣男士のこと。気にならないと言ったら嘘になる。しかし、鶴丸国永は恐らく他の鶴丸国永よりもいろんなものを見ていた。その所為だろう、どうしたって自分たちのことは二の次になる。 「だって俺は仮にも神だが、君はどうしたって人間だ」 掌からすり抜ける生命を、知っている。 「人間は、脆い」 「…そうだね」 彼女もそれを分かっているはずなのだ。 「上の人…というか、そうだな。元からある組織や結社…身内に審神者のいる人々、勿論本人たちも…彼らも頑張っているとは思うけれども、どうなるのか正直分からない」 「分からないか」 「ああ。この戦争は謂わば宗教戦争だ。人間はね、宗教というものを恐れるんだよ。いや、正しくは宗教によって結束した大きな力を、かな。でもね、この戦争は繰り返すよ」 一度では終わらない、と彼女は言う。 「そして、人間だってそれに気付かないほど愚かではない」 「でも、直ぐに対策を思い付くほど賢くもない」 「そうだ」 鶴丸国永の言葉に、彼女は頷いてみせる。 「戦争が終われば審神者をはじめとした霊能力者―――霊能力者と言うが、まあそれの異端扱いが始まるだろう。戦争の英雄は、基本的には大殺戮者だ。それは刀剣男士を使役している審神者も同じだ。…いや、今だってそういう扱いをされていない訳じゃあないが…戦争前よりもずっとそういった者たちは身を潜めるようになるだろう。各組織も能力者を守るために尽力するだろうが、果たしてそれがうまく行くか。今は戦争の認知すらされていない状態だが、戦争が終わればきっと情報規制は緩むだろう。…一般市民の目に映れば、次の戦争の準備とも取られかねない。実際、必要だとは思うがな。同じ敵が攻めてくるのだと、それをそのまま鵜呑みに出来るだろうか? 敵も、刀剣男士―――武器も、見えないものなのに」 「…彼らを守っているのは君たちなのにな」 「まったくだ」 それでも彼女の言葉には棘がなかった。無辜の一般市民を守っているという倨傲はあまり育たなかったのだろう。 「その前に、私が生きている間に戦争が終わるかどうか、分からないしな」 「…それもそうだな」 そう、鶴丸国永は最初から答えを知っていた。 それでも、その先を、先をと語る彼女を、見ていたかった。 20170416 |