ねずみとことりとすずと 

 その日、主の兄上のいる部署に出向いたのはカウンセリングのためだと聞いていた。
そこの職員が何処ぞの本丸を訪問するより、審神者自身が本丸から出る方が手続きが楽だからと、そういう理由だった。いつもは護衛を迷う主がすぐに鶴丸国永を指名したので、なるほどそういう趣旨のカウンセリングかと覚悟は出来ていたのだが。
「わあ〜! 無花果ちゃん久しぶり〜!! や〜相変わらずキョーミ深いね。蓬莱くんの術があってもこんなことになるなんて、思ってた以上の逸材みたいだね〜! そりゃあ上が手放さない訳だあ〜」
「人の妹をモルモットみたいに言わないでもらえますか、雪人(ゆきひと)先生」
「あ、いえ…私の対応もその、強引だったとは思うので…」
「無花果ちゃんがミスるなんて珍しい!」
「ミスとは言っていないだろう」
思わず口を挟む。
 髪の長いハイテンションな男はぐるりと首を回してこちらを見た。怖い。
「で、君がその鶴丸国永だね!? 元々戦いを好まないっていう刀剣男士に強制して自壊されるのって結構あるけど、君の分霊での報告って珍しいんだよね〜! 大丈夫? 自分が少し違うっていう自覚ある? 何か不便なことは? 検査する? あ、検査と言えば体液摂取、しかも血液でしょ? 無花果ちゃんの方は検査するよね? しようよ! 僕、知り合いを検査するの初めてなんだよね〜!」
「雪人先生落ち着いてください」
「落ち着いてるよ!」
「それで?」
初対面の人間に対して余計な一言が出ている気もするが仕方ない。気を抜けばすぐにでもひん剥かれそうだ。自分も、主も。
「そもそも俺が主の血を飲んで、何で主が検査されるんだ」
「ん〜? あれ?」
男は大仰に首を傾げた。
「あれれえ〜?」
「兄上、これどうしたら良いんだ」
「適度に無視しろ」
そんな無茶な。
「君、本当に特に意図せずやったの? 本当に無花果ちゃんのミスなの?」
「だからミスじゃあないと言っているだろう」
「無花果ちゃんを主と認めたのっていつ? 一般的に名乗りをした刀剣男士って相手を主と認めているって言われてるけど、君の場合はどうだった? というか、君は刀剣男士だけど自認はどっちのタイプ?」
「………兄上、この男は神が怖くないのか?」
「あは! なーるほど!!」
 嫌味を言ったら何か納得された。怖い。
「なるほどなるほど! 無花果ちゃん、ホントやっぱり逸材なんじゃない? 審神者辞めてこっちに異動しない? 給料は安くなるけどそれなりに楽しいし本丸より安全かもよ?」
「雪人先生、妹を危険なところに誘うのやめてもらえます」
「危険じゃないよお〜」
「審神者の任務解除されたらそれこそ上の思う壺じゃないですか」
「あ〜ああ〜そっかあ〜…残念…」
不穏な会話を刀剣男士の目の前でしないで欲しい。
「…主」
「何だ」
「審神者を辞めたりしないよな?」
「今のところそんな予定はないよ」
そんな遣り取りを男はほおお〜? ほお〜? と言いながら見てくるのでとても鬱陶しかった。



20170712