僕は君の流れ星 

 仮にも神と名につく生き物である刀剣男士が何処まで何をやれるのか、それは本人―――人でないので本人と言うのも些か可笑しい気がしたが、やはり会話というものを合わせる先は人間なので、細かいことは考えずに本人と言うことにする―――の意志の問題だと、少なくともこの£゚丸国永はそう思っていた。神だという自覚があれば、というか自覚があるだけで、出来ることは増えるだろう。例えば神隠しだとか、主である人間を自分たちの側に引っ張ることだとか。けれども一転して、その自覚がないものにはそんなことは出来ないし、そもそも思い付かない。それは周りの環境で出来上がるものとも言えるし、刀剣男士における個体差というやつなのかもしれなかった。
 この鶴丸国永はどちらかと言えば神だった。主に言われた訳でも他の刀剣男士や審神者に言われた訳でもなく、最初からそう思っていたタイプの刀剣男士だった。とは言え自分のことを完全に神だと思っていた訳でもない。その辺りはこの国の人間がよくぼやぼやとさせる神とその他の境界線のようなものだったのだろう、と思う。
「君が、嘘でも俺を愛していると言ってくれるのなら」
だから鶴丸国永は言う。弱り果てたような主を前にして、微塵も弱らないその瞳の光を見ながら、言う。
「嘘だという前提があるんだね」
「そうだろう?」
 思わずと言ったように苦笑した主に、鶴丸国永も苦笑を返した。
「俺は君を好いている、君も俺を好いている。けれどもそれは愛ではない。ましてや恋でもない」
否、本当は苦笑するようなことはないのかもしれなかった。
「執着としか名付けられぬこの感情を、俺たちはどうしたら良いんだろうな」
どうしなくてもいいよ、と言ってくれる主が好きだった。けれどもそんな平和な時間は終わりに近付いているのだ。
 鶴丸国永は考えなくてはならない。
「俺が付喪神ではなく、君が審神者でなかったら違っただろうか。俺たちは、違う着地点を見出だせていたか?」
「さあ、分からないよ。今生の私が出会ったのは、鶴丸国永、お前だけだ」
「…嬉しいことを言ってくれるぜ」
「ああ、でも、願うのなら、」
主は目を瞑る。
 ―――この戦いの、行く末を見届けるまでは。
「その願い、聞き遂げよう」



20170712