どうやって息をしたら良いのだろう 

 「兄上に会いたい」
鶴丸国永がそう言ったのはうららかな午後のことだった。平野藤四郎の持ってきてくれた御茶を飲みながらまるでいつも通りの主に伝える。
「君との、約束について」
 否、いつも通りだった。いつからかこれを徐々にいつも通りにしていった。彼女の兄が少しずつ忙しくなって、この本丸に顔を出しに来なくなったのを良いことに。
「………兄さんに話さなければならないほど酷いのか」
「ああ。そうだな」
きっぱりと告げる。嘘は吐かないつもりだった。主は鶴丸国永が嘘を吐かないと信じているから、余計にそうするしかなかった。
 ふふ、と彼女は笑う。
「君は誤魔化しはするが隠し事はしないな。それが、嬉しい」
笑い事ではないのだが、彼女にはもう笑うしか出来なかったのだろう。



 彼女の兄と合う時間はすぐに取れた。鶴丸国永は一振りだけで彼に向き合う。彼ならばこんな判断をした鶴丸国永を破壊することすら容易かったと思うが、もしそうなっても良かった。それほどに鶴丸国永は主のことを思っていた。単刀直入に切り出す。
「俺は無花果と約束をした。この戦いを見届けるまで、彼女をこの世界に留める、と」
「…ッお前………!!」
 すぐさま意味が分かったのだろう、掴みかかろうとしてくるのを彼の式が止めている。式の方は分かっているのだ、此処で鶴丸国永を責めても話が進まない。彼だって本当は分かっているのだ。
「まだ、大丈夫だ。………まだ」
そう、まだ大丈夫だった。だから。
「だから、君に問いに来た。彼女に聞いても、どうせ最終的な判断は君に委ねられるだろうからな」
息を荒げたまま、男は問う。
「お前は、どうなんだ」
「俺は………」
そんなの、考えるまでもない。
「あの子のいない世界なんて、考えたくもないな」
 本当は拐ってしまいたかった。



20170416