どうか貴方が幸せでありますように 

 まるで生命でも進んで削っているのかというほど多忙な男の後ろで鶴丸国永はふああ、と欠伸をしてみせた。勿論男が生命を削っている訳ではなく、戦争の終わりが見えてきたのもあってその調整も兼ねてあちこち奔走しているだけではあるのだが。しかし、と思う。この課内にもなかなかに人間の道を踏み外しているものが増えた。それは別に人間の法を逸脱しているという意味ではなく、いやそういう者もいたかもしれないが、今鶴丸国永の言いたいのは人間という種としての境界線を幾つか越えたものの話だった。
「君は人間をやめたりしないんだな」
「そりゃあ当たり前だろ」
後ろに目でもついてるのかと問いたくなるような正確さで返ってくる言葉。
「あの子のいない世界なんて、本当は守る価値なんかないんだから」
 生きている意味なんてないと、そこまで言わないのは彼が人間だからか。
「前から思っていたが…」
鶴丸国永は目を丸くする。
「君、凄まじいシスコンなんだな!!」
「鶴丸国永様、それ、今更ですよう」
これは死んでも治らないんですから、と言うミキに、鶴丸国永は一瞬目を丸くして、それから腹を抱えて笑う羽目になったのだった。

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20180323