廃材に休符を 

 髭切の感情は理解が出来ない、だって手に入らないのならば攫ってしまえとかそういうものではないのだ、彼の行動は。ただ彼は言った、君とずっと一緒にいたい、そのために僕は出来ることを何でもしよう、と。
「私、暇なのは嫌よ」
私が言ったのはそのくらいだった。そう、暇なのは嫌だった。髭切は心配しないで、と言った。やることはたくさんあるから、と。
 そうして私を撫でた手に肉欲は感じられなくて、やはり私は首を傾げるしかなかったのだ。どうして彼は私を求めるのだろう? 好きだと言っていた、愛していると言っていた。その一切を私はやわらかく撥ね付けた。私には、最愛のものがもういたから。
 だと言うのに彼は笑ったのだ。それで良いと、知っていると、分かっていると、それでも好きだなのだと、愛しているのだと。訳が分からない。
 だから、私は何もしないでそのまま待っているのだ。彼を止める理由がなかったから。

***




消えたオーロラ 

 主、と真夜中に髭切が揺り起こしてきたのが最後だった。
「あのね、僕、君を神隠ししようと思う」
「何故? …と聞いてもきっと、私には理解出来ないのでしょうね」
「かもしれないね。僕が君を好きだからだよ」
「私には最愛の男が既にいて、もうそれが入れ替わることはないのに?」
「うん、それも分かってる。分かってて、好きになってる」
「私を連れて行って連日犯すつもりなの?」
「君が僕を好きになるまではそういった触れ合いはしないつもりだよ」
「どうして?」
「君に僕を好きになって欲しいからかな」
会話が出来ているはずなのに、まったく繋がっていない気がする。
「主、一緒に来て欲しい」
「私がうんと頷くと思っているの?」
「思ってないから、最初だけは攫っていくね。その後は主のしたいようにしてもらっていいから。帰るのはナシね」
「貴方にも弟がいるでしょう」
「うん、でも、僕は君とは違うから」
 髭切はにっこりと笑う。
「僕は弟を愛していないから」
それに彼には僕は理解出来ないさ、君と同じ種類の生き物だからね、と髭切は言った。
 それがどういった意味なのか分からなくて聞き返そうとして、それを遮るように抱き締められたので何も聞けなかった。まあどうせ、この先無限に時間はあるのだ。その中で聞いても良いだろう。

***




途絶えた言の葉 

 弟のことが好きなのは本当だった。だからこそセックスだって出来たのだと思っている。臼間野蜜柑(うすまのみかん)はセックスというものが愛によってしか成されないものだと思っている。だからこそ自分の顕現した刀剣男士は皆一様に性衝動について申告してこないのだろう、と思う。
 他の審神者と交流はしているのだから、刀剣男士だって性欲を持つこともあると知っている。知っているし、その情報を得てからは全員を集めて話しづらいかもしれないが、と前置きをしてから話をした。けれども彼らは一様に首を傾げるだけで、その後の花街利用についても申し出られることはなかったし、こっそりと刀剣男士一振り一振りを呼び出して聞いてみても、それらしい反応は得られなかった。
 ならばこれは個体差というものなのだろう。刀剣男士の性格には顕現した審神者特性が受け継がれるという噂もある。あくまでも噂であり、こんのすけに聞いてもそのような噂は把握しておりますが、研究結果として出ている訳ではございません、と返ってくる。
 それでも蜜柑はそうであるのだ、と確信した。けれどもそうであれば、彼らもまた、弟を愛するのだろうか? 勿論、既に蜜柑と弟は断絶されており、この上なく完成されているから良いのだけれども、弟に恋慕するものが自分以外にいると思うと良い気はしなかった。
「でも、」
一人呟く。
「私の刀剣男士ですもの、私の心を分かってくれるに違いないわ」



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20180223