君に近づくために、壁をつくった。 (この壁を壊したら、僕らは) 

 その一期一振を見たのは配属されて一年が経とうという頃だった。一年というのは短い時間ではあるが、此処でやっていけるための知識や経験を積むのには充分な時間だった。だから一目で、その一期一振が人間に対して不信感を抱いていることが分かった。向こうが隠そうとしていないのもあるだろうが、私の経験値もまたそれなりに上がっているのだ。
 ここではそういった刀剣男士は珍しくない。こんな現場職員として働くことを選ぶなんていうのは、刀剣男士が下りてくる理由とは少々そぐわないのだ。それでも働いているということは、それだけの理由があったと見るべきだろう。伊達や酔狂でやってられるほどこの現場は甘くない。その読み通り、その一期一振はこの相談課の中でもなかなかに扱いづらい部類であった。それでも仕事は待ってくれないので、やっと卵の殻が外れたような私でも普通にその一期一振と出ることになった。
 一期一振は、強かった。とても強くて、強くて、
―――美しい。
 言葉が出なかった。私がじっと彼を見つめていることに気付いたのか、彼は刃をしまうとはっと嗤った。
 そう、嗤った。
 馬鹿にするように、どうして人間はいつもそうなのだ、と言わんばかりに。その顔に私はカッと目の前が赤くなるのを感じた。同じにされた、というよりかはそれほどまでに自分たち人間が彼を追い込んだのだ、という事実に苦しくなったのかもしれない。
「私を顕現した審神者というのはとても可笑しな人間でして、」
「はあ」
「どうやら私のことを好いていたようなのですよ。理由は美しいから、というもので、まあありきたりでしょう。しかしながらその後が良くなかった。主―――そう、私はまだあの人を主と呼ぶのですが、主は私をどうしても絶望させたかったらしいのです。その理由も好いていたからだと聞いております。ええ勿論私にはまったくもって理解出来ないのですが、どうにもそういう訳だったらしいのです。ですから、貴方のようなその純粋な視線であっても、私はあのような反応をしてしまうのです。長くなりましたが、失礼致しました」
「いえ、大丈夫ですよ」
私はすぐに言った。
「安心してください」
 そして、笑う。
「私、刀剣男士なんてだいきらいですから」



空色 @sora_odai

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20180223