![]() 見事に事故った。 一文目から何事かと思うがまあ山手線に跳ね飛ばされるよりかは悠長にしてられる出だしだと思う。いやあ本当に見事な事故だった。事故だったしわりと大惨事だったと思うのだけれども当事者だからこそ分かるものってあると思う。私は生きていた。奇跡的とかそういう話ではなく、まあ普通に見ていてあー、これ大惨事だけど死なない、みたいな俯瞰した感じというか何というか。 という訳でわやわやだが私が絶対に生きていると確信する中で一旦疲れたからと意識を落とし、次に目覚めた時は何故か目の前に幼女がいた。 何故。 というかこの幼女誰だと思った瞬間に私の中には記憶が流れ込んで来た。今この世界は戦争をしていてその戦争のために最前線で戦う者のことを審神者と呼んでいて、いろいろ端折るがこの幼女はそのための才能があるのだと言う。しかしながら幼女なので普通は所謂徴兵なんてものはされないのだけれども、幼女の母親が死んだあと後妻面で旦那に近付いた後輩の女にとって幼女は邪魔で、方々走り回ってようやくそれっぽい理由で噛み合ったのが政府が秘密裏に募集していた生贄というやつだった。オイ今生贄って言ったか? 後妻面は幼女の父親である旦那を口八丁で騙し幼女を政府へと差し出すことを了承させた。大丈夫、子供なら私が頑張りますから…! とか言ってる後妻面のことは本当にマジであとで殴ってやりたい。まあ旦那に相手にされていなかったのでざまあみろだ。旦那に関してはとりあえず連帯保証人になりそうな程度にお人好しで今回それが仇になった結果なので置いておく。いやあそれくらい見抜けよしっかりしろよ旦那!! とは思うけどまあそういうところが好きになってしまったので仕方ない。本当に仕方ない。そこが好きなので…子供を持つと変わるって聞いてたけどそれでも好きなので…とか言う心(?)の声が聞こえてくる気がするけれどもでも今はそれどころじゃないですし。っていうか今までの謎モノローグから察するにこの旦那というのは記憶の主の旦那だろうし、謎モノローグは最後に貴方は私なのです…! と爆弾を投下して消えた。 消えた!? よく分からないが記憶はちゃんと探れるようになっているが私にこの記憶を見せただか渡しただかした人の気配は消えた。嘘だろ。私に結婚した記憶もなければ子供がいた記憶もないのでさっきの言葉が本当なら未来とかそういう話になると思うのだけれども、未来の貴方の子供ですとか言われても無理じゃないですかそれこそ話に出て来た歴史改変とかになってませんかというか私の、ええとこの場合過去の私の身体はどうなったんですか病院か!? ツッコミどころしかないがそれなりにスン、と飲み込めたのはその設定を私が知っていたからだろう。ゲーム、という媒体であったが。刀剣乱舞。私はフーン、最近は擬人化モノが流行るな〜と思っていたのだが友人が最早海溝に飛び込んだと言わんばかりのハマりっぷりで、そりゃあもうアレだったので携帯アプリに下りてきた際に入れたのだ。まあ友人のおしゃべりに付き合っていてそこそこ興味が沸いたのもある。というか記憶が正しければ刀剣乱舞の舞台は二二〇五年であって私の生きていた二十一世紀ではないし、そもそもそのまま未来で私が結婚して子供を産んだのだとしてもやっぱりこの年代にはならないのではないか。オーケー、夢だな、夢であって欲しかった。 夢ではないし、どうやら私は今実体を持っていないようだし、幾ら念じてみても身体に戻れる感じはしないし、とりあえず私は腹をくくることにした。ええい、何でもかんでも度胸が大事だ。 という訳で私と見知らぬ幼女の一方的な二人三脚は始まったのであった。 花咲く乙女と七十八番目の運命 腹をくくった私が一番最初にしたのは幼女にコンタクトをとることだった。しかしどうやらこの子には私の姿は視えていないらしい。視えていないけれども感じはするし、部屋の中の物が勝手に動いても気にしないらしかった。なので姿が視えない私と勝手にこっくりさんとかやり始める。私の娘(仮)、すごく図太い。此処は政府で用意された部屋らしいが、刀剣男士もうろうろしているらしいし、そもそも付喪神を喚んでうんちゃらなんてことをするような場所だ。詳しくないけれどもこういうところでこっくりさんとかやったらいけない奴ではないのだろうか。怖い。 「あなたはだあれ?」 まっくろくろすけ? と思わず呟いたがボケるのはやめる。こっくりさんシートを活用して私はなんとか幼女と会話をこなしていく。別に物を動かすのは大変なことではないので、大変なのは幼女が如何に理解しやすいように話すかだった。 む ず か し い 「むずかしい? なにが?」 せ つ め い が 「そうなんだー…」 幼女だと言うのになかなか頭が良い。普通この遣り取りで子供はそうなんだとか言わない。多分。子供嫌いだしあんまり関わったことがないので何とも言えないのだが。 「おなまえは?」 少し迷ってから、私は本名を伝えることにした。この部屋には幼女しかいないし、監視カメラ系もない。どうしてそんなことが分かるのか分からないが、分かるのだから仕方ない。自分の名前のあとに、ひみつだよ、と付け足すのも忘れない。幼女は一度口パクでそれを繰り返すと、今度は自分の名前をなぞった。それからひみつだよ、と笑う。私がいるのはそっちじゃなかったけれども、まあ普通に絆された。 「あなたはわるいひとですか?」 ふ つ う そもそも本人に悪人かどうかなんて聞いて良いものなのだろうか。 「たべものはなにがすき?」 お む ら い す とろふわが好きだ。薄い方は好みじゃない。 「おりょうりとくい?」 ふ つ う そもそもこの状態で料理が出来るかどうかも怪しいが。ポルターガイスト程度なら困っていないが、がっつり料理となるとどうだろう。一応文字は書けるが、幼女の傍に謎の霊(生霊?)がついていると知れるのはまずいかもしれないと、証拠を残さないようにしている。 「すきないろは?」 み ど り 「すきなおはなは?」 き ん ぽ う げ 暫くとりとめのない会話が続いて、私がそう答えた途端幼女は目に見えてテンションが上がった。 「わたしのままもね、きんぽうげがすきでね、よくぱぱにおしえてくれたんだって。ぱぱはおぼえられなかったけど、わたしはちゃんとおぼえたよ!」 パパ、それは興味がなかったのでは? 幼女の家庭に不安を覚えながらも、私と幼女の絆はそこそこに深まっていった。 そうして、その日はやってくる。政府の職員(担当と言うらしい)に身支度を整えてもらって、幼女は手荷物と共に立ち上がる。更に別の職員もついてくるようだったが、そちらの彼は眼鏡が合わないらしく、目がチカチカする、と眼鏡をつけたり外したりしていた。彼は待機審神者と言うらしく、まあつまるところの短期ピンチヒッターらしい。詳しくは知らない。 結構しっかりした日本家屋に足を踏み入れると、刀剣男士たちはずらりと並んで待っていた。待機審神者の石英(せきえい)さんと担当・河鹿(かじか)さんが自己紹介をし直して頭を下げるのを見て、幼女も真似をするように頭を下げた。私は頭を下げない。どうせ見えていないのだから。 此処は地獄である。 幼女に渡された資料を読んだ私はそう思っていた。この本丸の前任の審神者はやらかしたらしく、刀剣男士に刺されたらしい。刺した刀剣男士は刀解を希望していたため、聞き取り調査のちに刀解が済んでいるらしい。それには他の刀剣男士も同意したと。一応今此処に残っているのは幼女に引き継がれる意志のあるもの、らしいがそれにしては殺気がすごい。一般人にも分かる殺気ってすごい。私がよく分からないが被害者であるように、彼らもまた被害者であるし、幼女だって被害者である。此処にはかわいそうなものしかいない。それはよく分かった。いやでもそれはそれ、これはこれである。絆されはしたがやっぱり私は子供なんか大嫌いだし正義の味方でもないし正直関わり合いになりたい訳じゃないし、だけれども一旦置いておこうね、子供なんて大嫌いだけどそれとこれとは別だよ私は理不尽を許す訳にはいかないのだだって私が理不尽にこんなことになってるのが許されていいはずがないので。 「この子に手を出してみろよ魂削ってでも呪い殺してやる」 そんなことが可能かはさておき。 20170814 |