野の上で兎を捕らえられたら 

 大丈夫だよ、と猫を抱えたまま鯰尾藤四郎は絞り出すように呟いた。
「大丈夫だよ、常磐さん」
それに対して猫ははい、と応えるだけだ。
「俺はもう、常磐さんの秘密に踏み込もうとはしないから」
 猫はそれを望んではいない。恐れていると言ってもいいだろうと思うほどに忌避している。だから鯰尾藤四郎がこれ以上、何をすることもしない。いつもの顔でいつものように、彼の秘密になんてなんにも気付いていないような顔で、彼のために、未来のために働く。
「でもね、覚えていて」
だから此処から先は独り言なのだ。
「俺が、骨喰が、」
 覚えています、とは猫は言わなかった。
「貴方の秘密に感づいていること」

約30の嘘
http://olyze.lomo.jp/30/index.html



20170131