色は匂えど散りぬるを



宗三左文字です、と名乗った付喪神は、なんだか今にも消えてしまいそうな雰囲気を纏っていた。
「貴方も、天下人の象徴を侍らせたいのですか…?」
それを聞いて、尻尾がおや、というふうに動いたのを加州清光は見ていた。
「あまり気乗りしないご様子ですね」
人間の未来なんて、という刀剣がいない訳ではない。
それは自分のこともあって、加州清光はよく分かっていたけれど。

彼はまた違うような気がするな、とそんなことを思った。ただの勘でしかなかったが。
「私が触れたことで、君に頼みたいことは既に伝わっていると思いますが。
嫌ですか? 世界を救うのは。それとも、私に所持されるのが嫌ですか?」
「そうですね…少し、悩みます」
貴方、どう見ても猫ですし。宗三左文字はたおやかに笑う。
それを言われてしまうとどうしようもありませんねえ、と猫も笑う。
「仕方ありません」
「無理に従わせますか?」
「いえ。元々そういうことは好みませんし、そもそも今は猫ですし」
そういうことしたくても出来ません、と片手を上げる。
「そちらの所持品に命じては?」
「私は彼らの持ち主ではありませんからね。言うなれば監督者です」
保護者でも良いですよ、と猫は続けた。保護者って、とツッコむ。
加州清光はこの猫を主と認めてはいるけれども、
どちらかと言うと世話をしているのは加州清光の方な気がする。
いや確かに手入れだとか出陣のスケジュールだとか、
そういうものを回してくれるのはこの猫ではあるのだが、
如何せん猫である故に自分で食事を用意したり、畑を整備したりなどは出来ないのだから。
「戦いたくないなら戦いたくないで、元の刀剣に戻って戴いても結構ですが…どうしますか? 
ちなみに戦わない場合、ウチでは養えませんよ」

カッツカツなんですから、と揺れる尻尾の真意が掴めなかった。





20150917