相談しましょそうしましょ 

 「今度こそ普通にイベントして普通にレベル上げしますよ! 特に極実装されてる子たち! 中心に!!」
低レベ太刀どうやって育成しよう…と尻尾で床をぺしんぺしんやっていた主である猫は、どうやらふっきれたらしかった。
「やっぱカンストさせるの」
「そうですねえ…。その方がなんとなく心に優しいと言うか…必要経験値えげつないって聞きますし…。その辺変わるんですかねえ。あ、でも今日演練で極を二振りカンストさせてる方いましたね。凄まじいですよね」
「常磐さんの心が折れるまではとりあえずカンスト目指すってことね」
「清光くん私に厳しくないですか? ぐぬぬ、これは何が何でもカンストを目指さないと…」
「はいはい。で、今日の予定は?」
「国俊くんメイン隊長でひたすら周回です。もし疲労抜きとか手入れ待ちになったらレベルが下の子から隊を組んでE-1に行きます」
「マップ踏破は後回しね。分かった」
加州清光は猫の指示通りに刀剣を呼び出す傍ら、常磐さんがこういうこと言う時って大抵フラグなんだよなあ、と思っていた。
 思っていたけれども加州清光には優しさというものが備わっているので、言葉にすることはしなかった。

 そういう訳で第…多分四部隊くらいである一行は三条大橋にやってきていた。検非違使対策としてレベルは69以下で揃えてある。
「しかし、まあ…今日はやたらと検非違使が出てきますね」
「そうだなー」
「いつもは検非違使のけの字すら見えないのに…まあ経験値置いていってくれるなら何も言いませんけど」
「俺もカンストに近付くしなー。オレがカンストしたら修行に行かせてくれんだろ?」
「はい、そのつもりです。国俊くんは初鍛刀なのに、此処までほったらかしにしていて本当にすみません…」
「別に気にしてねーよ。ほったらかしとか言っても練度はそこそこ上げてもらってたし。遠征も楽しかったし」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
そんなふうに話す愛染国俊と猫の前で、検非違使のいた空間に桜が舞った。
「あ、ドロップですね」
「誰だろうなー。あ、今って誰に食わせてるんだっけ」
「前田くんです。やっと今剣くんが上限に達しましたよ…」
「アイツすげえ食ってたもんなー」
「源氏の重宝、膝丸だ。此処に兄者は来ていないか?」
 しん、と空気が止まる。
「………え?」
「ん? 聞こえなかったか? 源氏の重宝、膝丸だ。此処に…」
「あっすまん聞こえてた」
愛染国俊にはちゃんと彼の名乗りが聞こえていたが、しかし。
 恐る恐る猫を見遣ると、案の定。
「常磐サン! 息しろー!!」
愛染国俊の声が響くも猫の尻尾はピーンと張ったままである。鯰尾藤四郎から話は聞いていたが、このタイミングはあまりにあまりだ。そういえばちらっとドロップ率があがるなんて話をこの猫はしていたような気がするけれど、またいつもの政府のキャンペーンということでアテにしていなかったというのにこのざまだ。天は猫に味方しない。
「こっちイベントマップじゃないんですけど!?」
「三条大橋だな」
「でも検非違使ドロップだしな。来ちまったもんは諦めて育てろ」
「別に嫌な訳じゃないですよ!? あまりの怒濤のドロップについていけていないだけで!!」
ようやっと戻ってきた猫を薬研藤四郎が慰める。
「まさか髭切くんが呼んだんじゃないでしょうね…」
「ははっ。その法則ならいち兄がなかなか来なかったことも、長曽祢の旦那が未だ来ないことも、兄弟が呼んでないってことになるなあ」
「薬研くんすみません…」
「気にしてはないがな」
「気にしてないならそういうジョークやめてくださいね!?」
 そんなやり取りをしながら橋を進みきって膝丸を連れ帰ると、出迎えに来ていた髭切が少しだけ困ったように笑っていた。
「兄者!」
「ああ、ええと…弟よ。よく来たね」
「あ、名前思い出せなかったんですね…」



20161019