恋人をだめにするタイプ いち主 「っていつも言われてたんだよな」 そう村上が呟いたのはとある午後のことである。仕事を片付けてお茶をしているところにいつもの通りに一期一振がやってきて、彼の分の茶も出してやったら何故そのようにするのです、と問われて先の言葉に繋がる。本当はもう少しあれやこれやがあったのだがまあ結果的にこうなったのは間違っていないのでそのままにする。一期一振とこうして恋人になったとは言え、主としてそのようなことをされるのは他に示しがつきません、とそんなようなことを言われたのが発端で、出た言葉だったはずだ。多分。 一期一振は以前にも恋人がいたのかと問うつもりだったようだが、今優先すべきはそちらではないと判断したようだった。今日の分の仕事はもう終わっているから、別に今聞いてくれても構わないのに。 「ちなみに、主は具体的にどのようなことを」 「家事洗濯掃除は普通に自分でやるしなんなら相手のを手伝って仕事帰ってきたらおかえりって頭撫でてやるくらい」 「………それは、流石に…どうかと…」 「お前に何が分かる!? 童貞のくせに!!」 「もう非童貞ですからな」 「ぼくで卒業したくせに!!」 「そうなんですよね…」 妙に真剣な顔でそう呟いた一期一振に、何か地雷を踏んだだろうか、と一抹の不安が過る。いや、何をどうオブラートに包んでも刀剣男士として人の身を持った自分の一期一振が、自分で童貞を卒業したのはただの事実であるはずなのだが。 「主殿は、大変渋っておられましたが、」 「ん?」 「ああ、性行為における上下の話です」 「何、気が変わった?」 「いえ、それはないのですが…主殿には私の悋気は言葉にしなければ気付いてもらえないようなので」 「ん? 悋気? 嫉妬ってこと?」 「ええ」 にっこりと、それが音として背景に見えるような様子で一期一振は微笑む。 「もし主殿が童貞であったのであれば、私も一度くらいは、と考えたかもしれませんが、何処の誰とも知らぬ輩の知っているそれに、私は嫉妬を覚えるのですよ」 「………ええー? 普通そこって上書きするとか、そういうふうになるんじゃないの」 「男というものは得てして名前を付けて保存だと聞いております」 「ねえ、誰からそれ聞いたの?」 それを無視して、一期一振は言う。 「ですから、私は貴方の新規作成ファイルにはなっても、他のものと同じフォルダに入れられることには我慢がならないのですよ」 という話を踏まえて今晩は覚悟しておいてくださいね―――と部屋を出ていった一期一振に、一体何を返したら主導権が奪い返せるのか、一瞬そんなことを思って。 「………いや、あの顔、ずっる………」 結局自分があの恋人にただ只管甘いことを突き付けられただけで終わった。 *** |