ぼくらのあいのゆくえ:今桜
*桜井くんが寮生設定
二月十三日。
翌日が恋人のイベントであるその夜、今吉は自室とは違う部屋にいた。
「さーくらい」
名前を呼びながら自分よりも少しばかり小さいその身体を引き寄せる。
「バレンタインやし、リボンかけた桜井が食べてください〜って言うてくれて、
チョコレートプレイしてくれれば最高やなぁ」
煩悩だらけの要望ではあるが、ここのところ今吉は受験勉強で、
桜井は新体制になった部をひっぱる存在として練習に打ち込んでいたので、
まともな触れ合いというものをしていないのだ。
仕方あるまい。
あれこれ溜まっているのは桜井とて同じはず、と腕の中へと視線を向けた。
「本当にそれで良いんですか?」
くるりと丸い瞳が見上げてくる。
「今吉サン、本当に、良いんですか?」
単語ごとに区切られたそれは普段の謝罪を重ねる時のようにウザったくはなく、
また試合の時のように強気でいるようにも感じられなかった。
じっと凪いだ瞳は本当にただ確認しているだけのようで、
恐らく此処で頷けば桜井はさっき今吉が言ったくだらない煩悩を叶えてくれるのだろう。
頷け、頷いてしまえ、そうせっつく本能の部分に揺られる。
ぐらぐらな頭で桜井を見据え、そっと息を吸う。
「………よくないです…」
その言葉に、桜井はほんわりと笑った。
それからするりと今吉の腕を抜け出す。
「僕今からお菓子作りますけど、一緒に作りますか?」
練習で疲れているだろうに、まだ動くというのか。
呆れにも似た賞賛を抱きつつ、今吉はこくりと頷いてその背を追う。
寮の部屋に簡易的に設置された台所に、材料をあーだこーだ言いながら並べる後ろ姿に、
こういう時間を堪能するのも、触れ合いと同じくらい大切だ、なんて。
「さくらい」
「何ですか、今吉サン」
「ワシ、何したら良え?」
「えっとーじゃあ、チョコレート計っておいてください」
ずっしりとした業務用チョコレートを受け取りながら、今吉はそんなことを思った。
「で、バレンタインは二人で台所でお菓子作ってたんよ」
翌日の図書館。
追い込みに掛かる受験生でいっぱいの其処で、今吉は報告もといノロケを零す。
向かいで丸付けをしていた諏佐は、盛大なため息のあとに呟いた。
「桜井は割合策士なんだな…」
「桜井に限ってンな訳ないやろ」
「恋は盲目ってこういうことか…将来お前、絶対尻に敷かれるよ」
「それはそれで…。
っちゅーか、将来も諏佐ン頭ン中ではワシと桜井は一緒におるんやなー嬉しいわ」
「………もう末期か」
お後がよろしいようで。
バレンタインリクエスト
for めとろさん
20140214