それはあまりに一方的で、恋なんて呼ぶには烏滸がましい。
向け合った矢印は、きっといつか互いを貫く。
それでも寄り添う理由になるのなら、僕らはそれを恋としよう。
美しき誤解
花宮真には大切な幼馴染がいる。
小学校中学年で花宮の家が関西に引越しをするまで隣の家に住んでいた、
良く聞く結婚の約束までした幼馴染だ。
子供の言うこと、と忘れる人間もいるだろう。
しかし、少なくとも花宮はその約束を忘れたことはなかったし、
向こうもそれは同じだろうと知っていた。
思っていた、ではない。
花宮の幼馴染は、そういう人間なのだから。
そういったところも含めて、花宮は結婚の約束をする程好きになったのだから。
周りより少し賢くて、苦労人体質で、嘘を吐くのがとても下手くそ。
そんな幼馴染も花宮を好きだと言ってくれた。
問題が(花宮の中ではなく、世間一般としての)あるとすれば、
その幼馴染が花宮と同じ男であることだろう。
約束をした時は男同士で結婚出来ないなど知らなかったから、
それを知った時はあまりにショックで泣きそうになりながら謝り倒した。
幼馴染はそれでも良いと言ってくれた。
結婚など出来なくてもずっと傍にいると。
その時の花宮の喜びは、言葉になど時間が経った今でも出来ない。
マジバ、後ろ姿。
今は大事な幼馴染の同級生をやっている妖怪サトリが齎した情報は正しかったらしい。
次に会う時は感謝にプラスして普通に先輩呼びしてやろう。
そう心に決めて席へ向かう。
「よしくん」
数年間封印していたその名前を口にする。
ぶわり、胸の辺りから何か広がるのを感じた。
上げられた顔は妖怪サトリから何枚も写メを貰っていたものの、
実際に見るのは本当に久しぶりで。
成長しているのに、根本の部分が変わっていない。
それが堪らなく嬉しい。
「覚えてない?―――まこちゃん、だよ」
きっと絶望に変わるだろう言葉を放つ。
でも大丈夫、その絶望はすぐに幸福に変わる、変えるから。
これを恋だなんて呼べないのは、花宮自身が一番良く分かっていた。
20130214