その首筋に牙を立て血を啜る妄想など、 恐らく恋人を持った人間ならば一度はしていることだろう。 しかしどうだ、この幼馴染は花宮の目の前で無防備に眠っている。 その沈黙こそが信頼なんてものよりもっと重い諏佐の本質なのだと花宮は知っている。 知ってしまっている。 どうして、と思う。 中学高校と同一人物だと知らなかったにしても、その悪名は諏佐の耳にも入っていたはずだ。 なのに、「まこちゃん」であるという、ただそれだけで。 ただそれだけで、こんなにも重い形ないものが、のしかかってくる。 「…アンタは馬鹿だ」 伸ばした手がその首を絞めることなど出来るはずもなくて。 行く宛のない指先の触れた壁は、思った以上に冷たかった。20130923(触れる、首筋、壁) 診断メーカー