ぼくのすべてがきみをそうさせる
きっとしあわせだったんでしょう。
じろり、とした瞳がこちらを伺っていた。
「本当に、良いのかよ」
その言葉は視線とは裏腹にひどく震えていて、諏佐は笑うしかないかった。
本日、六月十五日は諏佐の誕生日である。
そこで晴れて恋人という関係になった花宮から問われたのは、
プレゼントには何が欲しいか、というもの。
どれだけ頭が良くてもぱっと思いつかないものがあるのだなぁと一人感心していた諏佐に、
花宮は少しばかり俯いて答えを待っていた。
その様子が記憶の大半を占める幼い頃の記憶と重なりあって、ひどく愛おしく感じた。
「じゃあ、」
息を吸う。
こんなことに少しばかりの緊張を用いるようになってしまったのは成長の弊害か否か。
昔は当たり前に乞うことが出来ただろうに
(尤も昔はそういう発想がなかったので本当のところはどうなのか分からないが)、
分別というものをわきまえてしまった今、
あざとさやいじましさなどか際立ってしまい、どうにも踏ん切りが付かないでいる。
けれども今日は誕生日なのだ。
誕生日に少しくらい羽目を外したところで、誰に怒られることもないだろう。
そもそもそれを聞くのは目の前にいる恋人だけであり、
その恋人は恋人である贔屓目を引いても諏佐に激甘だと言えるのだから。
「お、おまえの、」
震えた声に花宮が首を傾げるのが見えた。
「きすが、ほしい」
ふるり。
そんな音階で、震える睫毛を見ていた。
今まで避けて来たと言えばそうなのだろう。
約束は約束で、確かにそれについて双方何を言うこともしなかったけれど。
だからと言って、今までと違うことをすれば、この関係すべてが崩れてしまいそうで。
そんな馬鹿らしい臆病さを蔓延らせて、二人、朽ちていくのを待っていただけ。
きっとそれでも良かった、それでも充分だった。
けれど、充分だからと言って無欲になる。
なんて都合よく、人間はできていないのだ。
「俺の欲しいもの、くれるんだろ」
目を閉じてやると、諦めたように、もしくは決心したように、息が吐かれるのが聞こえた。
近付いてくる気配。
その温度の名前を今更問うことなど、しなくて良いのだ。
image song「タユタ」RADWIMPS
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20140616