掌に握りしめたそれを、潰さないと誓うことが出来ますか。
貴方がいつか壊してしまうであろうものを、守り続けると、誓うことが出来ますか。



てのひらの氷:原澤



あまりに、冷たい心をしていると思った。

エースとして求められるあまり、自分の好きなようにプレーが出来なかったのだろう。
穏やかな笑顔の下のそれを、原澤は正確に読み取る。
それは一種のズルなのだとは思っていた。
しかし、使えるものを使わないでどうする、とも思っていた。

彼を、桐皇に呼ぼう。

そうすればきっと、その心を溶かす者に出会えるはずだ。
脳裏に浮かんだのは、もう一人の子供。
此処では好きなようにプレー出来るのだと、彼が氷を溶かすだろう。

見えてしまうのは特権だ、そして、人の領域へ勝手に踏み込むのと同義である。
だからこそ原澤は、それを自分のために使ったのなら、その分返そうと決めている。
原澤以外に知る人のいないこの能力のために課した、たった一つのルール。
破ったところで責める人間などいないけれど、それでも守りたいもの。

「諏佐、佳典くんですね」
一歩踏み出す。
怪訝そうな顔をして振り返る彼はまだ幼い。

大人が、守ってやらなければ。
そう思う。
守るべきものを守れる、大人が。
「桐皇学園高校の原澤です。うちに、来ませんか」
永遠に来ない春なんて、きっとないのだから。



20140128