とある幼馴染たちの全力闘争:木花



「マコトー!」
ライモンシティ、入り口。
音符が付きそうな程に明るい声。
聞き慣れたそれをハナミヤは息をするように無視をする。
否、しようとした。
「無視するなよー!」
「ぐえ」
襟首を掴まれて潰れたガマガルのような声が出た。
「久しぶりにバトルしようぜ!」
「…まじかよ…」
「ほらほら、外で良いよな!」
そうしてずるずると外に引っ張られていく。
人の話を聞きもしない相変わらずな幼馴染に、ハナミヤは諦めてされるがままにしていた。

外に出て向き合う。
「オレ手持ち四匹だけどルールはどうする?」
キヨシの視線はハナミヤの腰についたボールに向いていた。
キヨシのそれが四つなのに対し、ハナミヤのそれは二つ。
故郷であるセッカシティを旅立った時と変わらない。
「街も近ぇし、戦えるポケモンがいなくなるまで、で良いぜ」
うち一つを手に取って本来の大きさに戻す。
「まぁ、敗けるなんて有り得ねぇけどな!」
「そうこなくっちゃな!」
二人同時にボールを投げる。

「いけ!ガマガル!!」
「いけ!ヤブクロン!!」

くりりと大きな目をした丸っこいフォルムの青いポケモンと、
みょん、と伸びた耳が可愛らしい深緑のポケモンが向かい合う。
「ヤブクロンか」
ハナミヤが呟く。
どくタイプ、厄介だ。
「5番道路で会ったんだ」
「へぇ」
「ハナミヤのオタマロも進化したんだな!強そうだ!」
「強そう、じゃなくて強い、って分からせてやるよ!」
ガマガル越しにヤブクロンを、キヨシを見据え、指示を下す。

「ガマガル、ちょうおんぱ」
「ヤブクロン、どくびし」

キヨシの声に舌打ちした。
どくびしとは厄介な技を使ってくる。
これで次に出すポケモンはどく状態が決まったようなものだ。
ハナミヤの二匹目に毒が効くと分かっているからこその布石だ。
しかし、
「お前に二匹目まで使うかよ」
ガマガルに踏むなよ、と声を掛ける。
向こうではちょうおんぱを食らったヤブクロンがよろめいていた。

「ガマガル、アクアリング」
「ヤブクロン、おうふくビンタ」

ガマガルが水のリングを身にまとう。
これで少しだが当分の間は毎ターン体力が回復していく。
ちょうおんぱが一発であたったのも大きい。
ヤブクロンはこんらん状態のせいで、自分自身に攻撃を加えていた。
「こんらん、嫌だなぁ」
「ふはっ、別にキーのみでもなんでもなおしでも使ってくれて良いんだぜ?」
「…いや、使わない」
ちょっとだけ眉を寄せたキヨシが首を振る。
「もう数でハンデつけてもらってるからな。使わないよ」
「好きにしろよ」
全く、馬鹿なやつ。

「ガマガル、マッドショット」

げ、というキヨシの顔と共に未だこんらんしているヤブクロンに、マッドショットが当たる。
効果は抜群だ。
ふらり、と倒れたヤブクロンをキヨシが受け止める。
「戦闘不能だな」
「…そうだな、お疲れさま、ヤブクロン」
赤い光に包まれてヤブクロンがボールへ戻る。
「さぁ、次のポケモンはなんだよ?」
「うーん、まだ育ててる最中だけど…」
キヨシは迷った顔のまま、ボールを投げた。

「いけ!シビシラス!!」

「シビシラス?」
目の前に出て来たのは小さな白いポケモン。
みずタイプのような外見だが、透明な腹の中できらきらと光るあれは電気だろう。
でんきタイプならば有利だ。
ガマガルはじめんも併せ持っている、でんきタイプの攻撃は効かない。
「なかなか強くはならなくてなー」
しかし、キヨシが何の考えもなしに繰り出してくるとは考えがたい。
例え、それが育成中で弱いポケモンだとしても。

「ガマガル、もう一度マッドショット」
「シビシラス、でんじは!」

効果抜群を受けて尚ギリギリで浮かんでいるシビシラスがでんじはを撃つ。
びりり、と肩を震わせてガマガルが膝をついた。
まひだ。
「くそっ」
「弱いからって侮れないだろ?」
「お前のそういうとこが嫌いだよ!」
「褒め言葉か?」
舌を打ち鳴らして前を向く。

「ガマガル、マッドショット」
「シビシラス、たいあたり」

麻痺で動けないのか、不愉快そうに前を睨んだガマガルに、小さな身体がぶつかっていく。
見たところダメージはそんなに大きくなさそうだ。
攻撃さえ繰り出せればシビシラスも下せるだろう。

「もう一度、マッドショットだ」
「シビシラス、もう一度たいあたり」
今度は、運良く動けたようだ。
ガマガルの口から発射された光の玉たちがが泥になって、シビシラスを襲う。
悲鳴を上げてシビシラスが倒れた。
戦闘不能。
「二匹目撃破だな」
「…強いな」
に、と楽しそうにキヨシが笑った。
ぞくり、と背筋を歓喜の震えが走り抜ける。

こうしてめげずに向かってくるから、こいつのことは嫌いになれない。
キヨシが三つ目のボールを放る。
バトル、続行だ。



キヨシの三匹目、クマシュンのこごえるかぜに沈められたガマガルだったが、
ハナミヤの二匹目、ミミロップの鍛え抜かれたとびげりで戦闘不能、
そのままキヨシの四匹目、マッギョとのバトルになった。
キヨシの一匹目、ヤブクロンの残したどくびしでどく状態になったミミロップだったが、
威力最大のおんがえしで何とかマッギョを下し、バトルはハナミヤの勝利となった。
「やっぱりマコトは強いな!」
戦闘不能になった手持ちたちを抱えてキヨシが笑う。
「オレももっとこいつらの力を引き出してやりたいなぁ」
それに答えることはしない。
ポケモンの力を引き出す。
別にそんなことを考えてポケモンを育てている訳ではなかったから。
そういうところが、分かり合えない、分かり合いたくない。
この幼馴染はやたらときれいで、まるで光みたいだ。
「なぁ、ハナミヤ」
ふと顔を上げたキヨシに、嫌な予感を覚える。
「ライモンにはバトルサブウェイがあるんだよ」
「知ってる」
「マルチトレインっていうのもあってな、タッグバトルが出来るんだ」
「知ってる」
「行かないか?」
「行かない」
「よし行こう!」
「話聞いてたか馬鹿キヨシ!!」
サブウェイにはあの人がいるから嫌なんだよー!!というハナミヤの叫びは、
キヨシに聞き入れられることはなかった。





現時点の二人の手持ちと技



ハナミヤ
 ガマガル
  ちょうおんぱ / マッドショット / アクアリング / だくりゅう
 ミミロップ
  とびげり / おんがえし / はたく / せっか

Lv30とちょっと
 



キヨシ
 マッギョ
  でんきショック / マッドショット / どろばく / ほうでん
 ヤブクロン
  アシッドボム / どくびし / ヘドロこうげき / おうふくビンタ
 シビシラス
  たいあたり / でんじは / スパーク / チャージビーム
 クマシュン
  こごかぜ / みだれひっかき / こなゆき / しおみず

Lv25弱



20130309