君に特効薬!
今幼稚園ではお医者さんごっこが流行っているらしい。
その単語の羅列で一瞬邪なことが浮かんだ古橋だったが、
そこは中学生の幼気な妄想と言うことで許してもらいたい。
しかしながら幼稚園に通う隣の家の弘がそんな邪なことを考えるはずもなく、
勿論お医者さんごっことは言葉のまま医者と患者に分かれて診察のままごとをするものである。
「俺、ゆうしゅうなおいしゃさんなんだぜ!」
笑顔で言う弘は大変可愛らしくて、
「じゃあ私のことも診てくれるか?」
そう尋ねたのも仕方ないことなのである。
「弘先生」
「なんでしょう」
「私、調子が悪いみたいなんだ」
「ふむ。どこかいたいところはありますか?」
「胸が痛い」
「じゃあしんぞうの音をききましょう」
プラスチックで出来た聴診器が胸にあてられる。
本物のお医者さんは服の上からじゃないぞ、
と思うも真剣な顔をした弘にそんな無粋なツッコミをするのも憚られた。
「ふむ」
聞こえていないだろう心臓の音を聴き終わったのか、弘が聴診器を外す。
「先生、私は何の病気なんだ」
「たいへん、いいにくいのですが」
良くそんなフレーズを知っているな、と少し驚いた。
ドラマの影響だろうか。
「けっこん、出来ないびょうきです」
「…そうか」
しゅん、と気持ちが落ち込んでいくのが分かった。
別段結婚と言うものに夢を見ている訳ではないが、
こうして冗談でも弘に言われてしまうと気になってしまう。
「だいじょうぶ、ぜったいに、なおります」
「本当か?」
「はい」
顔を上げるとやっぱり弘は真剣な顔をしていて、でも少しだけさっきより耳を赤くして、
「俺が大きくなったら、けっこんするから、なおります」
ぎゅっと握られた手が熱かった。
「…本当か?」
「ほんとうです」
「約束だからな」
そうやってこつん、と額を合わせた、そういう思い出。
20131004