君さえいれば他は何もいらない:赤瀬



寝所からか細い声が自分を呼ぶのを赤司は聞いた。
聞き間違うことはない、彼の主、瀬戸のものである。
最近臥せることの多くなった瀬戸は、時折こうして赤司を呼ぶ。
それは一昔前を思い出させるようで、少し、落ち着かない。

「どうしたの、瀬戸」
「手を、握って欲しい」
少し開かれた扉から顔を覗かせれば、主はそう請うた。
歩を進め、彼の望み通り、布団の中へと手を滑り込ませる。
「…熱い、ね」
「そうだな」
月並みなことしか言えない、この胸の内を素直に吐露してしまえたら。
思うだけだ、そんなことになったら、きっと彼を刺してしまう。
首を振る代わりに少しだけ目を細める。

これは、墓場まで持って行くべき心なのだ。



(滑りこませる、熱、素直) 診断メーカー
20140211