白い痕:原山
*原くんが昔リスカしてた話
*ナチュラルに事後
消えないんだよ、と原は言った。
明らかに自分の目線が其処にあることがバレている言葉だった。
そんなに自分の視線は露骨だったろうか、山崎は反省しつつそうか、とだけ返す。
「ザキはこれ、カワイソーって思うの?」
カワイソー。
頭の中で繰り返す。
カワイソー、カワイソー、カワイソー。
「んー…?」
「何その生返事」
「ん、別に。思わねぇ、かな」
「…そー」
前髪に隠れた目は見えないが、ほっとした空気がぼわり、と湧いて出る。
原が目を見せてくれるのは、行為の最中だけだ。
挿入して暫くするとあの鬱陶しい程の前髪を全部掻き上げて、その目を晒す。
一度、どうしてそうするのかと尋ねたことがあった。
答えは、ザキのだらしなくひゃんひゃん喘いでる顔、見る価値あるよね、だと。
それを聞いた山崎が言葉を失ったのは言うまでもない。
「ザキはさぁ」
既に降ろされている前髪の所為で、目は見えない。
何故あんなに前髪を伸ばしているのか、それは聞いたことはない。
ただなんとなく、その一本だけ、奇麗に白く通っている痕に、何か関係している気がして。
山崎にはそれを聞くことが出来ない。
「オレが死にたいって言っても止めない?」
瞬きが、ひどくゆっくりに感じられた。
いち、に。
きっかり二回瞬かせて、何でもないような顔を作る。
「…難しいな」
「えー」
なんでぇ?と首に腕を絡めてくる原をさせたいようにさせたまま、今度は笑う。
「だって、お前のいない世界は楽しくなさそうだ」
そうしたら想定外の答えだったのか、さらさらした前髪越しに目が見える。
山崎は原のこの、少し垂れていてやる気のなさそうに見える目が好きだ。
「それにほら、」
良くも悪くも素直な原がああ言ったのだから、つまりそういうことなのだろう。
少しくらい自惚れたってバチは当たらない。
「死んだらオレの、あ、喘ぐ顔だって見れなくなるんだからな」
言い切ると同時にぶふっと原が吹き出した。
「な、なんだよ!」
「だ、だって…そんな真っ赤な顔で言うくらいなら、言わなきゃ良いのにぃー」
どさり、とそのまま押し倒される。
「え、はら?」
「ん、ザキがかわいーこと言うからー」
ね、もっかいしよ?と掻き上げられた前髪に、
山崎ははぁ、と息を吐いて降参、と言わんばかりに目を閉じたのだった。
20130412