秘密の話をしよう
馬鹿ばかり。
お前にだけ教えてやる。
死んだ魚のような目をしてみせたその友人(これは灰崎の一方的な認識である)に、
そう、内緒話をするように囁いた。
実際、内緒話だった。
このことは家族以外、誰も知らないのだから。
「オレ、ビョーキなんだよ」
「頭のですか」
「お前………ホント、顔に似合わず辛辣だよな」
黙ってればただの大人しくて弱々しい文学少年面してんのによ、と呟けば、
君がボクのことをそんなふうに思っていたとは意外でした、と返される。
「…君が、そうだと言うならそうなんでしょう」
「ビョーキの話?」
「病気の話です」
「ナンデ?」
「君は嘘は吐きませんから」
いたく信用されたモンだねえ、
と呟いてみせればそういう偽悪的なところが悪いんですよ、と返された。
「…お前さ、ホントに残んの」
妙な、間があった。
「はい」
その答えは間なんてなかったようにしっかりしていて、
そのしっかりさが逆に嘘のように聞こえた。
「でもお前に牙はない。爪もない。ついでに言えば羽根もない」
「それは君も同じでしょう」
頷く。
いつか失くなるものなのだから、最初からないのも同じだ。
少し、ヒトより筋力が優れているだけの、才能もない、人間。
「お前が、いつまで保つか」
「賭けますか」
「何をだよ」
「僕がいつまでバスケをしていられるか」
はっと、鼻から嘲笑が抜けていった。
そんなもの。
「お前はやめないだろ」
賭けるまでもない。
「ま、お前が敗けたって言うんなら、いつでも手は貸してやるけど?」
今からでも遅くねえよ?
手を伸ばすことすらしない。
答えは分かっているから。
「…君の、」
薄く、その唇が弛(たゆ)む。
「そういう、馬鹿みたいに優しいところ、好きですよ」
「ハッ、そうかよ。光栄だね」
20141113