カラ、カラ。:黒子



*黒子くんが二人いる感じのアレ



それはいつだってずっと、僕の傍にいた。

ごぽり、ごぽりと呼吸が消えていく。
これでもしも人魚だったなら、泡になって消えられたのに。
その前に物語の主人公ですらない僕には、何の助けの手も来ない。

腕をもがれたのは青峰くんが拳を合わせなかった、あの時だ。
ずくり、と音がして心の奥に、ぼとりと腕が落ちる音がした。
それを拾って走り去ろうとする影をぼんやりと見て、なんとなく、ああ、とだけ思っていた。
これが夢を見た有様だ。
光の影になる、バスケは楽しい、と自分に言い聞かせた結果だ。
そう思うと嗤えてきて、そうしたら次には腹立たしくなった。
自分の腕をもいでいったその影が憎らしくなった。
その役立たずな腕を持って行ってどうすると言うのだろう。
同じようにまた、影になる?笑わせるな。
其処まで思うと次にはつまらなくなった。
こんな存在が、何をしようと言うのだろう。
あの影も僕で、僕はあの影だ。
ああ、馬鹿馬鹿しい。
足を引っ掛けてやる。
すると影は転んで顔面を打ち付けた。
けれど、面白くない。
痛みに這いつくばったままの影をじっと見下ろしてから、
余っていた足でその背中を踏みつぶしてみた。
ギャッと声を上げたその顔が痛みに歪んで
(影だから分からないはずなのに何故だか分かるのだ)、
それを僕は非常に愛おしいと思う。
「止めないでください」
影が言う。
馬鹿じゃないのか、と僕は返した。
何を、なんて主語がなくても分かる。
同じなのだから。
でも、応えてなどやらない。
ただ、余ったままの足で、その両腕を必死で抱き締める影を傷付け続けた。
「君も分かっているんでしょう?」
悲鳴を上げる影に言う。
「もうあんなもの、好きでなんかいられません」
「止めてください」
懇願するような声を煩い、と一蹴した。
聞きたくなかった。

この影は僕なのにどうして僕と違うことを言うのだろう。

僕からの攻撃が止んだその隙に影は起き上がろうとしていた。
僕から奪ったその腕はもう彼のものになっている。
その腕を我が物顔で立ち上がろうとするのは、やっぱり何か気に入らなくて。
「がっ」
今度は押し倒してみた。
馬乗りになる。
「言ってください」
自分でも死刑宣告をするような声だと思った。
何処か震えていて、どうしようもない声。
だって僕はどんな答えが返って来るのか知っている。
「僕が好きでしょう?」
「…好きですよ」
笑顔だった。
「好きだからこそ、言いません。だって、」
耳を塞いだ。

無数の刃が降ってくる。
僕はそれを知っていた。
認めてしまった、認めてしまった、
この影は僕自身で、だからこそ僕さえ認めなければ、それで良かったのに。
「バスケが、好きでしょう?」
優しすぎる声に、抗えなどしない。

バスケが、すき、だ。

「…はい」
降ってくる刃を見つめる。
このまま僕が殺されてしまえばきっと、この影だけが残る。
此処はそういう世界。
たった一人が生き残れば良い世界。
「何してるんです」
「うごっ」
腹にイグナイトを食らった、なんてやつだ。
「いきますよ」
いつの間にか僕の腕は君の腕に変わっていて、
君の腕は僕の腕のままだけど、きっとそれは大した問題じゃなくて。
「…ッ」
涙が溢れて、
「大丈夫です」
追ってくる全てから逃げて逃げて、逃げおおせた先で、



「ほら、大丈夫だっただろ?」

かっこわるい僕でも、君の影でいて良いですか。



image song「心壊サミット」初音ミク(DECO*27) #RTされた数だけ好きなボカロ曲を黒バスキャラで描く
20130424