動物より露骨な僕ら:今諏佐
鏡越しに目が合う。
「やらしいなぁ」
思ったままを口にすれば、かぁ、と頬に朱が走った。
まだ赤くなれることに笑いながら、じっとしている。
耐えられない、とでも言うように腰が揺れようとするのを力を入れて阻止すれば、
逸らされていた目がまた合った。
睨まれているようだが、とろりとした瞳では威力はないに等しい。
寧ろ、煽っているのかと。
「いま、よし」
苦しそうに名前を呼ばれる。でも、欲しいのはその言葉じゃない。
「じらす、な…ッ」
迷うように揺れた瞳が、憎々しげに呟くがそれでも足りない。
「焦らしてなんかないで?」
じとり、と目頭に力が込められるけれど、素知らぬふりをする。
「いまよし、いまよし…しょう、いち…」
「名前呼ぶだけじゃ分からんで? 佳典」
「やだ、しょういち…、しょういち」
いやいや、と首を振りながら艶のある声で呼ばれるだけで、正直理性が切れそうだ。
これがおねだりと同義だと言うことは今吉にも分かっている。
だが、それでは面白くない。
「して欲しいことあるんなら言わないとな」
唇から零れ落ちる意地悪に、諏佐がきゅう、と唇を噛むのが見えた。
「ああ、噛んだらあかんて」
力が入っている場所をゆるく撫ぜると、そのやわい場所が少し白さを残して開放される。
この素直さが常日頃もう少しでもあれば、と思わなくもないが。
それではきっと、惹かれることすらなかった。
「よしのり?」
「しょういち」
そっと、寄せられる唇。
―――おまえが、ほしい。
「よう出来ました」
にい、と笑うと望み通りにくれてやる。
今だけとは言わずに、これからも、すべて。
でもきっと欲張りな今吉は、何度でも乞えと言うのだろうけれども。
そうして散々好きにして息を吐いた時に、
空気のように囁かれたもっかい、に今度こそ今吉の理性は切れた。
image song「鍵穴」平井堅
20150308