gain:山崎+花宮



何が良かったのかは知らないが、どうやら自分は花宮真のお眼鏡に適ったらしい。
山崎弘は隣の席の友人を見ながら、そんなことを思っていた。

奨学生のネクタイをしているということで、花宮の頭が良いのは一目瞭然であったし、
顔だってそこそこ整っている方なのだと思う。
いつもにこにこしているし、人当たりも悪くない方だ。
そんな物件を放っておく訳がなく、クラスメイトはこぞって花宮に話し掛けたがっていたが、
それでも花宮は依然として山崎くらいしか相手にはしなかった。
山崎としては友人が出来るのは良いことなのだが、
如何せん羨ましそうな目線には落ち着かない。
生来の強面のために嫌がらせを仕掛けてくる者はいなかったのには助かった。
いたとしても花宮が対処してしまうような気がしなくもないが。

「そういえば弘の部屋って何処」
「第五棟。桜寮って呼ばれてるとこ」
食堂で二人、今日の日替わりメニューをつつきながらそんな会話をする。
今日はシチューだった。
先日上級生が、食堂のアシスタントにシチューが食べたいと頼み込んでいる様子を見たから、
そのお陰なのかもしれない。
今度オムライスを頼んでみよう、そう心に決める。
思っていたよりも花宮との会話は普通極まりないもので、山崎としては拍子抜けだった。
「ああ、あそこか」
ふむ、とすぐさま頷く花宮は純粋にすごいと思う。
山崎はまだ地図を把握し切れておらず、時折移動教室の際なんかは迷子になることもある。
その度に花宮が探しに来てくれるので、まだ授業に遅れたりなんかはないのだが。

ちなみに、この学校では奨学生は中央にある棟に部屋を持つことになっている。
中央寮と呼ばれている其処では、一人につき一部屋が与えられているのだとか。
基本的に有事以外は関係者以外立ち入り禁止で、
勉強に専念出来るような環境が整っているらしい。
「他ンとこって相部屋なんだろ?相手どんな奴?」
「相部屋いないから俺一人で部屋使ってる」
「オレより待遇良いじゃねーか」
羨ましい、と花宮がパンにかぶりつこうとするのをトントン、と止めた。
千切る、と囁やけばああ、と頷かれる。

花宮はあまりマナーがしっかりしているとは言えなかった。
移動教室の恩もあるので、山崎が気付いた部分はその都度直させている。
花宮は覚えが良いので一度注意すれば大体直った。
あまり良い家柄の出身ではないのかもしれない、
そうは思ったが、この箱庭の中では血統など飾りのようなものだ。
わざわざ口にして尋ねる理由もない。
「今度遊びに行っても良いか?」
パンを飲み込んだらしい花宮が首を傾げる。
マナーはなってないが、こういう仕草は驚くほど様になる、そう思った。
「いーよ。桜咲く頃来いよ、俺の部屋からちょうど正門の並木道が良く見えんだ」
だから桜寮と呼ばれているのかもな、と付け足せば、楽しみだ、と返って来る。

こういう形もありだよな、ごろりとしたじゃがいもを頬張りながら山崎は思う。
相手に何かしらの価値を認められ、そこからなるのも、一つの友達の形だよな、と。

花宮が部屋に遊びに来る日が待ち遠しかった。



20141015