cigarette:山崎+原



原と同室になったのは二年の夏のことだった。

突然職員室に呼び出されたかと思ったら、
担任は言いづらそうに山崎、今一人部屋だったよな、と問うた。
「そう、ですが」
「その部屋に、一人、入れたい生徒がいるんだ」
はぁ、と気の抜けた声が出る。
「別に、良いですけど…」
「そうか、ありがとう。とりあえず、一週間お試しってことで…」
担任は疲れたように、手元の資料に目を落とした。

花宮の推薦だから頼むけど、無理なようだったら断ってくれて良いから。
そんな担任の言葉が脳内で繰り返される。
花宮の推薦、ということは、だ。
考える。
優等生の推薦で得られる情報は、その人間も優等生であるということだろう。
その点は別に良い。
山崎とてこの箱庭でそれなりに大人しく過ごしている自覚はあった。

そういう訳ならば、と山崎の頭には一つの仮定が浮かんでいた。



担任の設定した一週間というのはあっという間に過ぎて、
山崎はこのまま相部屋を続行する意志を担任に伝えていた。
いつも優しそうな笑みを湛える担任は、
そうか、でも無理はしないようにな、と山崎の頭を撫でた。
花宮がこの担任を嫌う理由が、少しだけ分かった気がした。

その足で住み慣れた部屋へと戻る。
扉を開けると、嗅ぎ慣れない匂い。
「…部屋で吸うなよ」
俺の連帯責任になるだろ、とその口に咥えられていたものを取り上げると火を消した。
その足で窓を開けて換気する。

原と同室になったのは、なんてことはない、ただのお目付け役だ。

花宮は優等生だと思われているし、
そんな彼と一緒にいる時間の多い山崎も必然的にそうなのだと思われている。
そういうこともあって、木吉は山崎に頼んだのだろう。

しかしながら、山崎は、強いていうなら花宮も、かっちりとした優等生である訳ではない。
「吸うなら古い部室棟の裏行けって言っただろ」
「えーだってあすこ遠いもん」
「じゃあ吸うな。俺の責任増やすな」
「ザキのいけず」
原はそう言って、引き出しから飴を取り出した。
煙草を吸うのは口寂しいからだと言っていたが、
飴で誤魔化せるのなら最初からそうして欲しい。
「ザキも食べる?」
「もらう」
「何味がいい?りんごとレモンとぶどうといちごがあるよ」
「ぶどうで」

はい、と投げられた飴の包み紙が、窓から差し込む光にきらきらと反射していた。



20141015