第一夜



こんな夢を見た。

諏佐と自分は真っ暗な夜道を歩いている。
どうも仕事を終えて家に帰る途中らしい。
知らないその田圃の畦道の中で、トランクが立てるガラガラという音も聞こえない。

ふと、自分の背中にずとり、と重みを感じた。
ずっと前からそこにあったような、でも間違いなくその瞬間に現れた重みである。
「背中重いねんけど、何かついとる?」
確かに、自身の背中に何かついている、いや、乗っている感覚はあった。
「いや、何も」
諏佐はいつもの表情でそう答える。
ほうか、と呟いてまた視線を前へと戻した。
諏佐が何もないと言うのならそうなのだろう。

真っ暗な道である。
どうもぼんやりと浮かび上がる道の先には、こじんまりとした社があるように見える。
「すさぁ、ここ、何処なんやろな」
「二丁目のきはじめ神社だろ」
「そうかぁ、きはじめ神社か」
聞き覚えはないが、どうやら自分はそれを知っていたらしい。
諏佐の言葉を聞いてふむふむと頷くうちに、
そうか、確かに自分はそれを知っている、という心持ちになってきた。

社はなかなか近付いて来なかった。
背中の重みはそのままである。
「すさぁ」
「まだだ」
「まだかぁ」
月がもうすぐ沈もうとしていた。
それでも社にはつかない。
背中のそれはだんだんと重みを増してきている。
「すさぁ」
「もう少しだ」
「もう少しか」
首筋を這い上がってきた感覚を無視する。
赤子のようにひどくやわらかいそれは、まるで石のように重く、ざりざりとしていた。



20130312