ロージー・ワンダーライフ!:青若



この世界には「ちみくろ」と言う生き物がいる。
体長十センチ程の掌に治まるそれは人間と同じような姿形をしている。
人語を理解するし喋りもする。
知能は個体差による、と言っておこう。
簡単に言えばちみっちゃい人間なのだ。
食べるのはちみくろフーズというココナッツが主原料のものだが。
なので、人に慣れてくればナタデココを欲しがる個体もいるのだとか。
姿が姿なので飼育には許可が必要であり、簡単ではあるが書類審査とテストがある。
維持費もそれなりにかかるのでまぁ、お金持ちの道楽と捉えても良いだろう。

何故私が突然こんな話をし始めたかというと、
察しの良い皆様はもうお気づきかと思うが、私にもちみくろ飼育許可が与えられたからである。
所謂一般市民の私だがちみくろの魅力にあてられてからは、
そりゃもう死に物狂いで働いてお金をかき集めた。
リア友は少し減ったけどそれも仕方ないや♪である。

「おじさん!」
「ああ、君か。もしかして、とうとう…?」
「はい!とうとう資格とりました!あの二人を売って下さい!!」
ちみくろには専門店が存在する。
其処のおじさんは、
私の母方の叔父の奥さんの父親の弟の友人の妹の娘の息子の家庭教師の兄という、
正直関係などないに等しい関係であり、日本に幾つかしかないちみくろ専門店の店主である。
そのないに等しい関係のおかげで、
私は金持ちの道楽であるちみくろを目にするに至ったのであるから、
人間の縁とは本当に素晴らしいものだと思う。

「はいはい、青峰と若松だよね」
この二人、人気だから確保しておくのに苦労したよ、と笑うおじさんは、
間違いなくとっても良い人だと思う。
おじさんに幸せが訪れますように。
そう思いながら手渡された二人のちみくろを見つめる。

青い髪に浅黒い肌をしている方が青峰大輝。
金に近い髪に白い肌をしている方が若松孝輔。
私がちみくろに一目惚れした要因である。

「アンタがオレらのマスター?」
くあ、とあくびをしながら青峰が言うのに頷く前に、横から若松の蹴りが入る。
「ってぇ!何すんだよ!!」
「最初の挨拶くらいちゃんとしろ!青峰!」
「ア?何でアンタに言われなきゃならねんだよ!」
そうして私の手の平の上で喧嘩を始める二人。
これだ、これである。
これが可愛くて、
私は一人でも高いちみくろを二人まとめて購入することに決めたのだ、じゅるり。
おっと、よだれが出るところだった、いかんいかん。
「こらこら、喧嘩しないでー」
手の平の二人に話しかけると、根は素直なのか、
二人は直ぐ喧嘩をやめてこっちを見上げてきた。
「今日から私がマスターだよ、よろしくね」
「よろしくおねがいします!」
「あー…よろしく?」
また手の平で喧嘩が始まるが、それも可愛いものである。

今晩からこの小さな二人が、
(見る人によっては)きゃっきゃうふふといちゃこらするのを眺めながら、
心を潤す生活が始まるのだ。
素晴らしい。
素晴らしすぎる。

優しいおじさんに手を振って店を後にする。
スキップをする私のポケットで揺れる二人が非難の声をあげるが、それくらい許してほしい。

薔薇色の生活の始まりだ!



20130322