assignment



なぁなぁ、と瀬戸が音符でも飛ばしてそうな顔で言った。
「おばさんにお菓子貰ったんだよ、後で食べようぜ」
ケーキですよケーキ、とでれっでれとしただらしのない顔を晒す瀬戸を、
花宮がコイツアホかという目で見つめる。
「お前もうちょっと危機感持てよ。
お前がノート取ってなくて範囲が分かんねぇとか言うからわ・ざ・わ・ざ来てやってんだぞ」
わざわざ、の部分に妙な強調がかかっていたのは気のせいではなさそうだ。
プリントを出せプリントを!!と机を叩く花宮を見てもその顔は引き締まらないらしい。
「範囲だけだろ」
「その範囲が大事なんだろ!」
大体なんで人に足を運ばせてんだ、ため息を吐きながらプリントをひったくった花宮に、
尚も瀬戸はへらりとした笑みを浮かべるだけだ。
「そもそも範囲だけなら口頭でもイケただろ」
「えーだってオレだけ勉強するのも不公平じゃね?」
「お前…」
それをやって来なかったのはお前の自己責任であって不公平も何も。
恐らく続くはずだったであろう花宮の説教を遮ったのは、可愛らしいノックの音だった。

どうぞ、と言ったはずなのに開かない扉を不思議に思い開けてみると、
その向こうにいたのは両手いっぱいにお菓子を持った康次郎だった。
「もっていってって」
「これはこれは」
「瀬戸の良く話す康次郎か?」
瀬戸が一つずつそれを受け取っていると、後ろから山崎が声をかけてくる。
こんにちはに対してこっくんと頭を下げてみせた康次郎に、
山崎が笑ってこっちに来るかと問うた。
康次郎が瀬戸を見上げる。
その意味を正確に読み取って、瀬戸はどうぞ、と部屋のドアをもう少し多めに押し開いた。

途端に喜色に染まる頬に、
なんとなくこんなに課題を溜め込んだ自分が申し訳なくなってくるのだった。



20141209