貴方は誰のもの:青→山・花←山



最初はなんだったんだっけ、と現実逃避を試みる頭がそんなことを思っていた。
中学時代だったはずだ。
中学時代も花宮と同じチームでプレイしていた山崎はレギュラーでなかったものの、
ジャージですぐにその所属を知られたらしい。
だん、と襟首を捕まれ壁に押し付けられて、
その時はキセキの青峰はこれで潰せるなあ、なんて言う楽天的な思考をしていたはずだったのに。

何を思ったのか壁に押し付けられたままキスをされて、
「今日からお前は俺ンだ」
なんて言われたものだからすべてが狂ってしまった。

それ以降、大会がある度にこうして暗がりに連れ込まれている。
「お前のご主人様は誰だ?」
今日だって、自動販売機の奥にある表からは見えにくい空間で、
そんな意味のない問いかけをされている。
「は、なっ」
その名前を全部言い終わる前にまた景色が回った。
じん、と遅れてやって来た痛みに張り飛ばされたのだと気付く。
「そうじゃ、ねぇだろ?」
くわんくわんと反響する音の中、のしりと腹の辺りに重みが乗った。
馬乗りになられたのだ、それくらいちゃんと見えなくても分かる。

がっと顎を掴まれて、無理やりにそちらを向かされた。
そんなことをしている張本人と目が合う。
「…言えるよな」
唇を噛み締める。
目の前のこの男の名前を紡いでやれば済む話だった。
けれどそれを山崎のプライドは許さない。
「だから、言ってんだろ」
「ちげえよ」
「違くねえよ」
負けじと睨み返す。
「オレは花宮の駒だ。お前ンじゃ、ねえ」

きっぱりとそう返すと、一瞬、一瞬だけ見下ろしてくる目がぐらりと揺れた。
でもそれは本当に一瞬で、次の瞬間には怒りを灯したものに変わる。
「…躾が足りねえってか」
「躾けられるような関係じゃねえだろ」
はやく、この手を離せ。
そうは言ってもその言葉が聞き入られることはないと、分かってしまっている。

無言で近付いてくる顔に、
次に何をされるかはもう分かりきっていて、諦めたように山崎は目を瞑った。
これだけ乱暴にするのに、どうしてかいつも、キスだけは死ぬほど優しい。
その所為だ、と山崎は思う。

噛み付いてやろう、そんな気力がもう、湧いてこないのは。その所為なのだ。



ひろしくんは青峰に頭を押さえつけられ、 「お前のご主人様は誰だ?…言えるよな」と言われます。 診断メーカー
20140802