貴方のことを心配してよい存在でいたいのです。:実渕さんと小梅ちゃん(クロスオーバー)



部活のない放課後。
踏切で少女を見た。

帽子をかぶり、眼鏡を掛けた少女だった。
ぼんやりとその目線は踏切の端の方に注がれている。
嫌だな、と実渕は思った。
その踏切はつい最近、その少女と同じくらいの少年が事故にあった場所だ。
そんな場所を見つめている彼女は一人で、
細い肩がこの世界の何処にも居場所がないと、主張しているようにも見えた。
嫌な感覚を振り払うように少女の方へと足を向ける。

「危ないわよ」
その肩をとん、と叩くと少女は振り返った。
可愛い子だな、と思う。
「あぶ…ない?」
首を傾げる所作もさまになっていて、
こういう選ばれたような女の子は存在するのだな、と感心してしまった。
「そこ、このあいだ事故があったの」
少女の目線の先辺りを指差す。
「遊んでいた男の子がね、そこで足を挫いちゃったみたいで。周りには誰もいなくて」
こんな可愛い子にそんな残酷で悲しい話をするのはどうかとも思ったが、
言葉がするすると唇からこぼれ落ちていった。
「………そう、なんだ」
少女はこくり、と頷いてから、またその場所へと目をやる。
まるで何かみえているみたいだ、なんて。
そんなことあるわけないと首を振る。
「だから、」
「あ、あの、」
再度危ないからと忠告しようとした声は遮られた。
「その子の名前…とか、わ、分かり、ます、か…?」
「名前?」
思わず聞き返す。
「は、はい…名前、です」

名前。
もう一度、繰り返した。

結論から言うと、実渕はその少年の名を知っていた。
そもそもこの事件のことを憶えていたのもその悲劇性からではなく、
その名前の所為だったのだから。
目が眩むなんて表現は生ぬるい、鮮烈な光のような後輩に、よく似た、名前。

「ど、どうか…教えて、もらえません、か」
実渕の様子から察したのか、少女が見上げてくる。
その怯えたような喋り方からは想像も出来ないような、つよい眸だった。
いきが、とまりそうになる。

気付いたら、しゃがんで目線を合わせていた。
「―――」
内緒事を囁くように、その名を紡ぐ。
ざあ、と強い風が吹いて、
まるでその瞬間だけ世界に二人きりになってしまったような、そんな心地がした。

少女はそれを聞くと、また視線を踏切の中へとやる。
ふわり、と紡がれる名前が祈りのようで、
それだけで名前を聞いた時から胸のうちにつかえていたものが取り除かれるようだった。

「…ありがとう、ございます」
音が戻ってきて、少女ははにかんで礼を告げる。
「これで、あの子も、いけた」
「私は…別に…」
明らかに可笑しな言葉が混じっていた気がするのに、それを指摘することも出来なかった。
「だから、これはお礼」
迎えも来たから、とその声はひどく近くで聞こえた。

頬に、やわらかな感覚。

じゃあね、と少女は駆け出す。
ぽかん、と眺める先で、その後ろ姿はスーツを来た男と合流した。
大げさに少女を抱き締める男に、遠くからでも彼女を心配していたことが分かる。

彼処が少女の居場所なのだと、そう思った。
そう思ったら、何故だかひどく安心した。



数日後、偶然つけていたテレビで少女と男の正体を知るのは、また別の話。



#5月23日はキスの日らしいので リプで一番目に指定されたキャラが 二番目に指定されたキャラにキスをする 小梅ちゃん(モバマス)がれお姉(黒バス)に
20140530