いじっぱり:花山
*モブ女の子の名前が少々出てきます
「花宮」
山崎に話しかけられたのは部活を終えた更衣室の中でのことだった。
山崎が制服に着替え終わったところなのに対し、花宮は既に帰り支度を済ませている。
「藤原さんのことなんだけど」
藤原、その名前で花宮の頭に浮かんだのは一人の女子生徒だ。
霧崎の制服を着た、可愛らしい清楚系の少女。
「何か花宮にひどいこと言われたって…津賀屋さんから怒られたけど、」
「ああ、言ったな」
本当か?というその最後を待つ間もなく花宮が答える。
津賀屋というのはきっと、その藤原の友達なのだろう。
女とは厄介な生き物だ。
偽善めいた考えを振り回し、他人の事情にやたら首を突っ込みたがる。
やれやれ、と首を振り花宮は鞄を持ち上げた。
「おま…っ」
話は終わりだ、とばかりの花宮の行動に山崎が眉を顰めるのが見えた。
「…ッ、意地張ンのもいい加減にしろよ!」
怒声を背にすたすたと歩いていく。
他のメンバーは関わり合いになりたくないとばかりに知らんぷりだ。
「オレがっ!何も知らねぇと思ってンだろ!知ってンだよ!!
下駄箱に入ってたオレ宛てのラブレター破り捨ててンのも、
オレに告白しようとした子の心を悉く折ってンのも!」
ああ、それオレも知ってる、という顔になったのも見ないふり。
山崎に知れていることだって、計算のうちだ。
馬鹿なこいつにも分かるようにやっていたのだから。
今まで噛み付いてこなかったことが可笑しかったのだ。
部室の扉に手をかける。
「理由がねぇなんて言わせねーぞ!!」
何処か頼りなくゆれ始めたその声にはぁ、とため息を吐いて立ち止まった。
そして踵を返して山崎のところまで戻る。
唇を噛み締めてこちらを見ている山崎の目の前に立つと、
「ばっかじゃねぇの」
ぐい、とその腕を掴んだ。
「う、わ」
十数センチも上にあるその瞳を睨みつけながらその唇に食らいつくように接吻る。
「理由、これで充分だろ」
「…足りねーよ」
「はぁ?」
「言葉で言えよ」
高い位置から見下ろされているはずなのに、上目遣いをされているような心地。
「我が侭だな」
「意地っ張りよかマシだ」
もう一度掴んだままの襟首を引き寄せて、今度は優しく触れるだけ。
尚も不服そうな色の瞳をじっと見つめて、一言。
「好きだ」
20130412