20130315一万一回目に君を呼ぶのが誰であれ、君がかえって来るのならば。*2013年3月15日時点における若干本誌バレを聞いた人の 恐らく今後こうならないであろう予想 *二重人格説推し *ひたすら赤司さんがイタイ 「退け、テツヤ」 「退きません!」 「無駄だ。僕の前に、お前が立っていることは出来ないよ」 第二クォーター目、残り十五秒。 地に伏した黒子を置き去りに、赤司がゴールへと向かう。 「確かに僕一人では無理でした。でも―――」 レイアップに行く赤司に影がかかる。 「僕は一人じゃありませんッ!」 雄叫びと共にそれを止めたのは、火神。 てんてん、とボールが転がって行く。 ビーッとけたたましい音が、第二クォーターの終わりを告げていた。 「…はは」 床を見つめ、確かに聞こえた笑い声に、黒子はバッと顔を上げる。 がらりと雰囲気が変わった彼に、彼のチームメイトも駆け寄る足を止めた。 「…まさか、オマエが来るなんてな」 すっと顔を上げて見つめて来た彼を、黒子は良く知っている。 「久しぶりだなァ、黒子。元気にしてたか?」 でも、言葉が出ない。 それを成し遂げるのは自分ではないと思っていたから。 「なーんて、ずっと見てたんだけどな」 「…赤司くん」 からからに乾いてく口腔内に、やっとのことで紡ぎ上げたその名に首を振った。 「いえ、キャプテン」 元、ですが、と小さく付け足す。 もう一年以上経っているはずなのに、昨日のことのように思い出せた。 たぱぱ、と血が床の上に落ちた。 「キャプテン!!」 悲痛な声と共に黒子が駆け寄る。 「ああ、黒子か。別に何ともねぇよ」 「何ともない訳ないじゃないですか…ッ目から…血が…」 周りがざわざわとしているのも、耳には入って来なかった。 ただ彼の瞳から流れ落ちるその赤い雫だけが、この世の終わりのように網膜を焼いていた。 自分の所為だ。 黒子は思う。 この怪我は、自分の所為だ。 自分に力がなかったから。 「…ごめんなさい…」 言葉が漏れる。 「黒子?」 「ごめんなさい…僕の所為です、キャプテン、ごめんなさい」 壊れたように謝罪を繰り返す黒子の頭を、赤司はそっと撫ぜた。 「黒子」 血にまみれた瞳が黒子を射抜く。 「これは黒子の所為じゃねぇよ」 「でも…ッ」 尚も言い募る黒子の頭をもう一度撫ぜると、赤司はふむ、と呟いた。 「そうだな、じゃあこうしよう。 今オマエが混乱しているのはオレが不甲斐ないからだ。 混乱しているオマエはそんなことないと言うかもしれねぇ。 だけど、本来一人で戦える力を持った人間はそんな心配はさせねぇモンだ」 何を言っているんだ、そうは思うも言葉が出ない。 「だから、オマエが落ち着くまでは、そんな心配しなくて良い赤司征十郎になってやるよ」 そう遺して救護室に連れて行かれた彼は、戻っては来なかった。 「全中連覇おめでとう」 同じ顔、でも違う表情で彼は言う。 「テツヤ、まだ動揺しているようだな」 「だって…こんなの…」 あまりに、おかしい。 でもカラフルな彼らは彼の怪我も、変貌も気に掛けた様子はなくて。 まるで自分だけがおかしいかのような。 「じゃあ、僕から一つ、挑戦状だ」 お前たちも聞いてくれると嬉しいな、そう彼が言えば、 二人の会話に聞き耳を立てているだけだった周りが顔を上げた。 「もし、お前たちがキャプテンを取り戻したかったら、僕に敗けたと思わせてごらん。 敗北を突きつけろ、なんて難しいことは言わないよ。 ただ、思わせるだけで良い。 そうしたらキャプテンは戻って来るだろう」 その言葉に黒子は目を見開く。 彼は、彼を返す気があるのだろうか? その疑問は、とても恐ろしく思えた。 「そう言われずとも敗北を突きつけに行ってやるのだよ」 「良く分かんないッスけど、オレも頑張るッス!」 「お前もいつか倒してやんよ」 「んーオレは赤ちんがそのままで良いって言うならそれで良いかなぁ」 「その時は全力を尽くすと誓え」 各々返事をするカラフルな彼らはいつも通りすぎて、それがまた恐ろしかった。 「テツヤ?」 「きゃぷ、てん…」 「キャプテンじゃないよ」 彼はとても優しい顔で黒子を見つめる。 「僕は赤司征十郎だ。言っている意味は、分かったね?」 それは、死刑宣告のようだった。 退部届けを出す、少し前の話。 あの時から橙になった左目が、黒子を同じように貫いていた。 「あの時も言っただろ、これはオレがまだ未熟だった、それだけだ。 でも黒子、オマエはまだそうじゃないと言い張るんだな?」 「黒子っちだけじゃないっスよ!!」 観客席から声がした。 「黄瀬くん…」 「アレは赤司っちだけが背負うものじゃないッス!」 「その通りなのだよ」 緑間くん、と緑の彼を見やる。 「あの頃のオレたちはまだ未熟だった、しかしアレは赤司だけの問題ではない」 「あーめんどくせぇ。 アレは一人でバスケやってなかったら防げたモンだろ」 「赤ちんは一人で頑張りすぎー。 ま、頑張らせちゃったのオレらなんだろーけど」 青峰くん、紫原くん。 恐ろしいと、あの日感じた彼らが、今、こんなにも心強い。 「良いだろう、来い」 彼―――赤司征十郎が笑う。 「お前たちが正しいんだって、オレに見せてみろよ」 ビーッと、三分前のブザーが鳴った。image song「何度でも」Dreans Come True