飲込んだ言葉で窒息死:今山



*山崎くんが花宮と同中設定



どうやらこの人は本気だったらしいと、さいごに思ったのは、そんなことだった。

今吉翔一は花宮真と、そして困ったことに彼らと同じ中学に身をおいている山崎弘の先輩だ。
いつだって思考の斜め上を行く人、
だからこれも花宮に対する嫌がらせの一環なのだと、そう思っていた。
好きだの愛してるだの結婚しようだの。
冗談というには重く、呪詛というには軽い。
そんな口調でうたわれるそんな言葉が、もしかしたら本物だったのかもしれない、
そんなふうに思ったのは卒業する背中を見送ってからだった。

手の中に、第二ボタン。

それだけ握らせて、あとは何も言わないで。
まだ咲かない桜の横をさっさと横切って行ったその背中を見てしまえば、
何も思わないなんて出来る訳なかった。

さいごだ、と思った。
さいごのチャンスだ、と。
彼が本気なのかもしれないと思って、それが嫌ではない時点でもう答えなんて出たようなものだ。
あとは選択するだけで、そうしたらきっと、それなりの幸せというやつが手に入るのだろう。

そう分かっていても、山崎はその背中を追いかけなかった。
この言葉を言うことは、花宮に対する裏切りだとも思っていた。

ただ、まだほんのりと体温の残るボタンを握りしめる。
桜が咲いて散る頃には、この言葉も嚥下できるだろう、そう思っていた。



4×8の日 シュロ
20140409