影遊び:左人
「お、お前は、ぼ、ぼ、ぼくに、ほ、鳳凰さまの面影を、見ているだけだ」
震える声で、それでも気丈に言い放ったそのあとの唇はきゅっと結ばれる。
可哀想な程にその顔面に怯えを滲ませて、
それでもその子供は前言を撤回する気がないようだった。
思わずため息を吐く。
弁解するでもなく、ただ伸ばした手は避けられることはなかった。
小さな身体を抱き上げる。
震えているのは声だけなのか、その怯えは振りなのか、腕の中のそれが振動することはない。
もう一度、ため息を吐いた。
年齢に見合わず聡くて、賢くて、だからこそ馬鹿な子供。
鳳凰と重ねて見たことがないと言えば嘘になる。
溌剌と感情豊かに、
忍としては不相応な程真っ直ぐであった彼とは、似ても似つかない子供だったけれど。
それでも、何処か重なるところがあったように感じるのは、
二人が共に過ごした時間というものが長いからだろうか。
「ぼ、ぼくが成長してしまったら、全て終わるんだろう?」
思い出をなぞっているだけだと彼は言う。
「ぼくが、お、お、お前の知る、鳳凰さまを、越えてしまった、ら」
なぞる思い出がなくなったら、と。
腕に力を込める。
ぐ、と苦しそうな声が上がる。
きっと彼の言うことは間違いではない、だから否定も出来ない。
なのに、なのに、ああ、どうしてだろう。
この手を絶対に離さないと、そんなことが思えるなんて。
20140313