君の心に渡ってキスをする ロアミナ

 眠っている、という状態は実のところ純粋種の死神には関係がない。白日ミナモが自らのことを純粋種の死神、と称してしまうのには若干の疑問が残るけれども、どうせ人間の中では生きられないのだ。それなら半分だけでも死神として、ちゃんとやっていくしかない。幸か不幸かミナモには溢れる才能とそれを支える努力をする忍耐強さが備わっていたので、言うほど難しい決断ではなかった。
「なんだ、お前が来たのか」
「うん」
「京は」
「もうそろそろ転生だから忙しいみたい」
「寂しいのか」
「それ、同じことをロアに返せるよ」
「…そう、だな」
 ロアが、まだ人間だった頃の、兄の魂。自殺をした人間が死神の仕事の補佐をしているなんて、その名前が罪人種であるなんて、酷いことをするな、と思う。
「ミナモ」
「何」
「お前はこれからどうするんだ」
「出来るだけ長く、貴方を見守れるように頑張るよ」
「魔法花が手に入ってもか」
「うん。…まあ、こうして遊びに来ることは出来なくなると思うけど」
「………遊びに来てたつもりだったのか」
「違うの?」
「お前は時々、世間知らずに見えるな」
「まあ、反論はしないけど」
素直な物言いをしてやったら、ロアはため息を吐いてミナモを引き寄せた。
 精神しかない世界で、それをやるのはあまりに意味がないことのように思えたけれど。
「何? やっぱり寂しくなった?」
「…お前、そういうことをあのシスコンから教わってないのか」
「タイラが何?」
「ああ、もう良い」
両頬を掴まれて、そのまま唇が重なる。え、と声が漏れた隙に舌が入り込んで来る。
「ん、ぅ、」
「鼻で息するんだよ」
「ふ、あ、」
「そう」
ぞくぞくと何かが背中を駆け上がって、どうして良いのか分からなくなる。
 暫くして満足したのか、ロアが離れていく。唇の周りが処理出来なかった唾液でべたべたで、どうしたら良いのか分からずとりあえず袖で拭く。
「医療行為が必要には思えなかったけど」
「…お前、本気でそれ言ってるのか」
「本気も何も…人工呼吸でしょう」
「違うが、………もう良い。タイラが悪い」
「何の話?」
「良いから来い」
もう一度、というように合わせた唇でロアが何をしたいのか、やっぱり分かりはしないのだ。



睡郷 @suikyou_odai



20191221