君の視線の先まで ラインハルト(リゼロ)×いずみ

 その優男然としたしかしあまりにもチートな存在が店にやってきたのは多分偶然で、願いというものはあるのだろうけれども指摘しようとも彼はそれは自分でどうにかすべきものだからとそれしか言わないのだから商売上がったりである。そもそも彼から何か代価をとろうものならいずみにすら感知仕切れない諸々の機嫌を損ねそうなので取引が成立しないことに少々安心していた面もあるのだけれども。
 何を隠そうこの男、皇涼水以上のチート的存在である。涼水に関しては彼女自身に加えて彼女に集まるものも関係しているのだがそれはこの男も同じだろうから比較対象としては間違っていないだろうと思う。
 ラインハルト・ヴァン・アストレアと名乗った彼は、叶えて欲しい願いがないにも関わらず最初の偶然以降暇を見つけてはこの店に遊びにきているようだった。それもまた、手土産を携えて来るというのだから無碍に追い返すことも出来ない。
 「君がなんデ此処に来るノカ理解に苦しむヨ」
ある日ころんと溢れた言葉に悪意はなかった。いずみを殺そうとしているのならばいざ知らず、ラインハルトはこの周辺の世界の出身ではないらしい。あまりにも文化が違いすぎるし、持ってくる手土産も似たようなものは知っているが、という状況だ。
 いずみの言葉にラインハルトはしばらくぽかんとしていた。それから言葉を噛み砕くように頷いて、伝わってなかったんだね、と呟いた。
「伝わってなかっタ、とハ?」
「僕が此処に来る理由だよ」
分かっていてはぐらかされているのだと思っていた、と笑う顔は年相応に見えて、こういったチート的存在もそれなりにちゃんと人間をしているのだな、と人間ではない身で思う。
「いずみ、僕が此処に通っているのはね、」
「ウン」
「君のことが好きだからだよ」
「………ウン?」
俄かに信じがたい言葉が聞こえた気がした。
「えっト…?」
「君が女性であることは分かっているよ」
「それハまァ不思議じゃないケド…」
「君が誰かを見ているのも、なんとなく分かる。それに、僕が敵う日は来ないということも」
「そこマデ見透かされるト流石に腹立ツんだケド」
「それはごめん。でもいずみ、僕はそれくらい君をちゃんと見ている」
勿論、だから何だという話だろうけれど。
 男は膝をつく。まるで、本当に愛を捧げるように。
「僕に、君を君の愛する存在ごと、愛させて欲しい」
その言葉を聞いて、いずみは天を仰いだ。
「…別ニ、好きでいルことに許可は必要なイと思うケド」
「なら、」
「好きにしなヨ」
よかった、ありがとう、と笑う同い年であるらしい赤毛の男に、いずみはため息をついてお土産を頬張った。



20160923