隣のかみさま
「神様は残酷だね」 暖かい部屋で吹き荒ぶ風を聞きながら、そうヤマネは呟いた。 「残酷?」 「そう」 みかんを飲み込んでからその瞳を細めて、 「だってほら、二人一緒に生まれさせてくれなかった」 同じ病院、同じ日にち、同じ時間。 ただ違うのは親、それだけ。 窓から飛び移れるほど近いこの距離も、 同じ家に生まれなかったという大きな壁を表しているようで。 ヤマネがそれをひどく嫌っているのを、良く知っている。 「ヤマネは全部一緒が良かった?」 「…うん」 出来ることならば、 同じ人間が良かったと囁くヤマネはうっとりと、蕩けそうな目をしていた。 生まれた以上同じになることなど不可能だ。 どれだけ力を尽くそうとも、違うものが完全に一体になることなど出来ない。 「でも、良いこともあった」 そう呟けば、ヤマネの胡乱な視線が突き刺さった。 何が、と促すそれに応えて言葉を紡ぐ。 「ほら、一緒に生まれたら殺し合わないといけなかった」 同じ存在のそれは、もう一つを殺すことで神に近付く。 完璧な存在を求める愚かしさが一つになることを求めてくる。 ヤマネのそれが愚かだとは言わないが、そのうちそうなるのではないかと思うと、怖い。 「私はヤマネとそうならなくて良かったと思うよ」 同じ病院、同じ日にち、同じ時間、隣同士。 まるで運命のように引き合うこれが偶然だというのなら、何も救えやしない。 「神様がいるなのなら私は感謝したいよ」 笑う。 ぎこちなさが目立つだろうそれに、ヤマネは呆れたように返してくれた。 「双子に生まれなくて良かった」 愚かしさに染まりそうになる、貴方など体現しなくて良かった。
#非公式RTしたフォロワーさんのイメージでSSを一本書く イメージ:はるたさん
20130305