執筆日不明天使になれなかった少年 アイツには彼女がいる。 とても可愛い女の子。 『もしもし』 咄嗟に押した携帯の番号。 誰のものか分からなかったけれど、声を聴いて分かる。 「ごめ、夜遅く…」 『何、また何かあったの』 そう聞いてくるのは俺の親友で、俺の秘密を知っている、唯一の人間。 「アイツの、彼女の話、聞いちゃって」 忘れたくても忘れられない、アイツの、楽しそうな声。 彼女を自慢するように、彼女のことを話した、唇の動き。 『…そっか』 「ごめん、馬鹿だよな、俺」 『何故』 「叶いもしない、恋をして」 そもそも、本当に恋かどうかも分からないくせに。 『そうかな』 「ん、多分そうなんだと思う」 聞いておいて、自己完結。 「悪かった、切るよ」 『ちょ、ま、オイ―――』 虚しい機械音。 「幸せなら良いなんて、言えねェよ…」 この胸を占拠する黒い感情は、 「俺はお前の…幸せなんて、願えない」 いつしか、大好きなアイツのことも傷つける。 ―――さよなら、愛しい人――― その言葉を、言う日が来ないように。