執筆日不明 / 旧拍手正義論 「正義ってどう思う?」 彼女の質問はいつになく難しいものだった。 「僕は思想に似たものだと思うんだ」 彼女は私の答えを待つことなく、小さな声で続けた。 《思想》って言うのは字の如く《思い》だ 《思い》は人それぞれ《違う》 《違う》ものを押しつけてはいけない じゃないと、折角今まで保ってきた バランスが 崩れる 「彼も同じだった」 彼女の言葉から、私は一人のクラスメイトを想像する。 「“俺が正しい”“間違いなどない” その傲り高ぶった感情が、僕らのすれ違いを生んで、上手く、行かなかったでしょう?」 彼女の目は遠い。 「一方通行の《思い》は迷惑なだけだ―――」 私はただ、彼女の話を聞いていた。 感じることも、聞きたいこともあったが、今はそれは後回しで良いと思っていた。